読書日記

『火影に咲く』 <旧>読書日記1555 

2024年02月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


木内昇『火影に咲く』集英社(図書館)

幕末を舞台にし、どちらかと言うと動乱の時期に志し半ばで倒れ、結果として「脇役」となった男と想いを交わした女たちを描く。

その男女の組み合わせは、梁川星巌=妻 紅蘭*、吉田稔麿=てい、沖田総司=布来、高杉晋作=君尾*、岡本健三郎*=タカ?、中村半次郎=さと*。
これらの女性たちの内で実在したことがはっきりしているのは3人。維新後まで生き残ったのは中村半次郎(のちの桐野利明)だけであり、梁川星巌は安静の大獄以前に死亡している。

さて、「紅蘭」は梁川星巌の妻の紅蘭の視点で書かれており、妻であると同時に星巌の高弟の一人だと自認する紅蘭は新撰組に捕縛されるも夫のことは何も知らぬと抗弁し、救ってくれた近藤勇の求愛には「天長様を守るお方となるのであれば」と拒む。
「薄ら陽」は松下村塾の三傑の一人として謳われた吉田稔麿の主観として書かれ、京に潜伏中新撰組の密偵山崎丞の顔を見覚えるが同時に山崎からも疑われる。情勢についての冷静な見通しを持つが池田屋での会合の最中に新撰組に襲われ、なんとか脱出するも長州藩邸の前で切腹して死ぬ。
「呑龍」も沖田総司の主観であり、次第にやつれていく彼を励ます同病を患う老女布来、そして哀れにも藩の名誉のため切腹せざるを得なかった会津藩士柴司の一件を記す。
「春疾風」は高杉晋作と政論を交わしたいと願う芸妓の君尾の視線で描かれ、晋作の話で長州藩の志士たちに言い寄られるが、晋作は遠い人のまま終わる。なお、実在の君尾は維新後も芸妓として誇り高い一生を過ごした。
「徒花」坂本龍馬と一時行動を共にした土佐藩岡本健三郎の視点で描かれる。京に潜伏した健三郎は郷士身分の坂本の護衛を命ぜられるが、坂本との能力差を思い知らされ止宿していた宿の娘のタカとの恋も叶わなかった。
「光華」は中村半次郎の主観で描かれるが、人斬りの異名を持つが実際は違って心優しき男である半次郎は村田煙管店の娘さとと理無い仲になる。が、不器用な半次郎はさとを幸せにする為に写真店でさとと二人の写真を撮った後、別れを告げる(なお、この写真は残っている)。
(20218年月21日読了)



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