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読書日記
『宇宙の果ての本屋』 読書日記333
2024年02月15日
テーマ:読書日記
立原透耶編『宇宙の果ての本屋』新紀元社(図書館)
中国SFの中短篇を集めたもので、新年早々に図書館の購入目録に入っているのを発見して早速に予約。蔵書として、おそらく、最初の読者となった。
実はこの本は現代中国SF傑作選第1集の『時のきざはし』に続く第2集で編者も同じ立原透耶である。選者は「序」で第1集について言及しながら「前集が入門編だとすると今集はそこから少し進んでSF色が少し強めのものを多めに入れたつもりである」と書く。以下の15人・15話を収録していて480ページの大冊である。
顧適(グー・シー)「生命のための詩と遠方」海洋汚染防止の為に原油を吸収し、自己複製のできるナノマシンが放置され数十年経つと。
何夕(ホー・シー)「小雨」タイムスライスをして(ほぼ)同時に2人の男と恋をする女性。
韓松(ハン・ソン)「仏性」ロボットが禅に目覚める、と。
宝樹(パオシュー)「円環少女」性成熟後、再びヒドラ状態に戻り容体として生まれ変わることを永遠にくり返す少女。
陸秋槎(ルー・チウチャー)「杞憂」古代中国(春秋・戦国期)に強力な軍事科学技術が存在していたら。
陳楸帆(チェン・チウファン)「女神(ガデス)のG」オーガズムを追い求めすべての男性にそれを分かち与えることのできる女性の求めたこと。
王晋康(ワン・ジンカン)「水星播種」金属ナノマシンを始まりとする新たな生態系の始まり。
王侃瑜(レジーナ・カンユー・ワン)「消防士」火事の中から人を救い出すことを使命とした兄と妹。
程婧波(チョン・ジンポー)「猫嫌いの小松さん」小松左京へのオマージュ。
梁清散(リョウ・チンサン)「夜明けの前の島」清朝末期に起こった百日維新(戊戌の政変)に絡む物語。
万象峰年(ワンシェン・フォンニェン)「時の点灯人」時間が物理から離れ、時の止まった世界にたった一つ残った時間発生器。
譚楷(タン・カイ)「死に神の口づけ」20年前にこのコロナ禍を予言したかのような話で当局の対策も現実と似ている。
趙海虹(ジャオ・ハイホン)「一九二三年の物語」水夢機によって水に残された記憶を辿ると。
昼温(ジョウ・ウェン)「人生を盗んだ少女」ミラーニューロンの活性化により、他人の経験を吸収できる様になると。
江波(ジアン・ポー)「宇宙の果ての本屋」人間が来る限り本屋を開き続けるという望みを持ったものの生涯。
豊富なそして奔放なアイデアの中に秘かな(?)社会批判が含まれているものもあり、もともとのものなのか訳者によるものか意味が判らない作品もあったが、アメリカのSFとも日本のSFとも異なった味のSFを読むことで改めてSFとは何かを考えさせられた。
それにしても表題作、初めはささやかな望みであったはずのものがここまで壮大な物語になるとはびっくり。
(2024年2月2日読了)
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