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読書日記
『家康の遠き道』 <旧>読書日記1546
2024年01月26日
テーマ:<旧>読書日記
岩井三四二『家康の遠き道』光文社文庫
幼少期から天下統一までの長い道のりを描くのかと思ったら、関ヶ原の戦いに勝ち(1600)幕府を開いた(1603)あとの晩年の家康に絞り、1609〜1616の約7年間を描いたものであった。
キーワードは「草創」と「守成」。家康が好んで読んだという『貞観政要』のキーワードでもある。つまり、著者はこの1609〜1616という時期を家康が守成を固めようとした時期であったと解釈した訳である。もっとも家康が駿府に移り大御所として君臨し始めたのは1607年からであるが。
家康関連の年表を見れば1609〜1616では1614年の大坂冬の陣と翌年の大坂夏の陣があるだけである。やや細かい事項まで出ているもので1609年にオランダ、1613年にイギリスに商館の設立を許した(ちなみに、このあとイギリスは1623年のアンボイナ事件でオランダに敗れ、東南アジアから撤退しそれ以降幕末まで日本には来なかった)。
ということでこの話で創業を為した家康は守成を意識し、特に豊臣家を滅ぼすことを目指して細心の注意を払いつつ、諸大名にも圧力を加えていく。と書いたが話は地味である。いや、たった8年間を描いて1冊の本に仕立てるのであるから、著者の力量はすごいと思う。しかも、普通なら叙述の中心になるであろう「大坂の陣」についてはおよそ400ページの内の80ページほどしか費やさないのである。
残りの320ページは家康の日々と内心に抱く不安…自分の健康に自信はあるものの、70歳を超えて人生の終焉も遠くはない。しかし、成人の息子は秀忠と忠輝のみで、今ひとつ頼りない。2代目は秀忠に譲ったもののその後が心配だ。それに引き換え、豊臣秀頼は侮れない…をどう取り除くか、という話である。
ついには、自分は東照大権現という神になり、自らが死して後は子孫は「神の一族」とすることこそ守成の道であるという境地に至るのである。
(2021年8月1日読了)
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