読書日記

『破落戸』 読書日記323 

2024年01月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


諸田玲子『破落戸』文藝春秋(図書館)

単行本の内容紹介では

大火でお袖を失ってから五年。度重なる恋人や仲間との別れに気力を失い逼塞していた瓢六も、前作で盟友・篠崎弥左衛門と再会し、再び悪に立ち向かうべく動き始めていた。時は幕末、水野越前守を後ろ盾に悪行をはたらく南町奉行の”妖怪”こと鳥居甲斐守との闘いが熾烈を極めるなか、共に働く謎の女人、奈緒の過去が明らかに……。

とあり、文庫本では
円熟の江戸活劇、いよいよクライマックスのシリーズ第5弾!

文化人を弾圧し悪名高い「天保の改革」。瓢六は弥左衛門やお奈緒らと陰に陽に立ち向かうが、やがて圧政者たちも決して一枚岩ではないことに気付く。
「妖怪」こと鳥居耀蔵の裏切り、それによる水野越前守の失脚と復活。一方瓢六は勝家の若き当主・麟太郎と親交を深める。
時代はうねり、活劇シリーズいよいよ佳境へ。
解説・大矢博子
とある。

本巻の背景となる「天保の改革」を略述すると、天保の改革を主導した水野忠邦は天保5年(1834年)に老中に任ぜられ、同10年(1839年)に老中首座となった。天保8年(1837年)4月に家慶が第12代将軍に就任し、ついで1841年(天保12年)閏1月に大御所・家斉の薨去を経て、家斉旧側近を罷免し鳥居耀蔵などを登用して「天保の改革」を始める。天保14年(1843年)9月に上知令を断行しようとして大名・旗本の反対に遭い、腹心の鳥居耀蔵の裏切りによって老中を罷免されて失脚。しかし、弘化元年(1844年)5月に当時の老中首座土井利位が将軍家慶の不興を買い、水野忠邦が老中首座に再任される。

その結果鳥居耀蔵は罪に問われ弘化2年(1845年)に讃岐丸亀藩主京極高朗に預けられ明治になってから釈放される。一方の水野もまた同年9月に家督は長男・水野忠精に継ぐことを許された上で強制隠居・謹慎が命じられた上、まもなく出羽国山形藩に懲罰的転封を命じられた。

つまり、本巻では1841年から1845年までのおよそ4年間の話である。ただし、本書中ではそうした時の流れが不鮮明である。瓢六はもちろん、主要な登場人物である篠崎弥左衛門やお奈緒の年齢などは不詳のままであり、弥左衛門の息子である弥太郎も十代になるやならずという説明が冒頭付近で書かれるてはいるが本書中では年をとったのかとらないのか判らない。

結局、物語としては面白いのであるけれど、時間の経過が感じられないので、話を振り返ってみると呆然とするわけだ。言い換えると、点として読めば面白いがそれが繋がって線にならない感じがする。
(2024年1月8日読了)



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