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『決定版 日本の喜劇人』 <旧>読書日記1544 

2024年01月22日 ナビトモブログ記事
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小林信彦『決定版 日本の喜劇人』新潮社(図書館)

本書の来歴を書くと、まず雑誌「新劇」に1971年の6月号から翌1972年3月まで連載された原稿をもとに1972年に初版が発行された。それが77年に『底本 日本の喜劇人』、82年に新潮文庫版『日本の喜劇人』と改版されるごとに内容の加筆・修正が行われ、2008年に函入り2巻本『定本 日本の喜劇人』となった時には『日本の喜劇人』『日本の喜劇人2』『おかしな男 渥美清』『笑学百科』『天才伝説 横山やすし』『これがタレントだ 1963・1964』が収録されたものになり、2020年になってこの『決定版』が刊行された。

著者についても書いておくと、1932年(昭和7年)、和菓子屋の長男として生まれ、幼少期より多くの舞台や映画に触れて育った。早稲田大学文学部を卒業後、江戸川乱歩の勧めで「宝石」に短編小説や翻訳小説の批評を寄稿、「ヒッチコックマガジン」創刊編集長を務めたのちに『虚栄の市』(中原弓彦名義)で作家デビュー。創作のかたわら、日本テレビ井原忠プロデューサーに誘われたことがきっかけで、坂本九や植木等などのバラエティ番組、映画の制作に携わる(1964〜1969)。以降は多くの小説、評論、エッセイを発表し続けている。Wikipediaでは日本の小説家、評論家、コラムニストという肩書きである。なお著者は芸の「見巧者」として有名。

|日本の喜劇人|(括弧内は章の副題)
第1章 古川緑波
第2章 榎本健一
第3章 森繁久弥の影(伴淳三郎 三木のり平 山茶花究 有島一郎 堺俊二 益田喜頓)
第4章 占領軍の影(トニー谷 フランキー堺)
第5章 道化の原点(脱線トリオ クレイジー・キャッツ)
第6章 醒めた道化師の世界(日活活劇の周辺)
第7章 クレイジー王朝の治世
第8章 上昇志向と下降志向(渥美清 小沢昭一)
第9章 大坂の影(「てなもんや三度笠」を中心に)
第10章 ふたたび道化の原点へ(てんぷくトリオ コント55号 由利徹)
第11章 藤山寛美
第12章 日本の喜劇人・再説
最終章 高度成長のあと
|日本の喜劇人2|
第1部 植木等
第2部 藤山寛美
第3部 伊東四朗
「決定版 日本の喜劇人」あとがき

上の目次を見れば判る通り、戦前・戦後の喜劇人を網羅している様でもある。ただ、著者はポリシーとして間接的な資料類に頼らず、「できる限り、自分自身が体験したり、自分の目で見聞きしたものから」論じられているため、偏りもあり、それがこの本の魅力にも欠点にもなっている様に思う。もう一つ、あくまで「喜劇人」を対象としており第一に舞台あるいは実演、次いでTV、最後に映画の順で評価しているために、20世紀末から今世紀にかけてのコメディアンが俎上に上がることは少ない。かろうじて、タモリ、ビートたけし、明石家さんまのいわゆるビッグ3についても最終章の末尾に2ページほどが加えられているだけである。
(2021年7月28日読了)



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