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読書日記
『べっぴん』 読書日記319
2024年01月13日
テーマ:読書日記
諸田玲子『べっぴん』文藝春秋(図書館)
「あくじゃれ瓢吉」シリーズの3冊目。前の2巻は短篇集であったものがこの巻は長篇となる。正確には「きらら虫」「女難」「春の別れ」「災い転じて」「金平糖」「べっぴん」「杵蔵の涙」の7つの短篇らしいが一冊通じて1つの事件を追う構成なので結局長篇と同じだろう。
文庫本の内容紹介では
売れっ子芸者のお袖との仲も円満、親友に恋の指南もするとびきりの色男・瓢六。智恵と愛嬌を買われかりだされたある事件の聞き込みで、致命的なミスを犯してしまう。自分には何かが欠けている―お袖とも離れ、重い心を抱えた瓢六は、事件の陰にいる謎の美女を追い詰められるのか。人気シリーズ新展開。
ということであるが、各章の頭に訳の判らない思い出話の様な文が置かれている。田牧大和の本にも冒頭で思わせぶりなしかも本文とは関わりの無さそうな文があり、読み終えて見るとその一文を本文がうまく取り込んでいるのであるが、本書でも似たような感じだ。ネタバラシをしてしまうと、これは「事件の陰にいる謎の美女」の視点で見たここに至るまでのいきさつであるけれど、この独白によって読者は感じるものがあるのかも知れない。
いずれにしろ、巻末で瓢六の恩人とも言える人物は死ぬ。弁慶は今日の五条大橋で牛若丸と出会い、義経が死ぬまでそばにいるのであるが、例えて言うとその弁慶が一ノ谷の戦いで死んでしまったような感じである。紹介で書いた致命的なミスも同じことであるが、うーん、登場人物を贅沢に使うなぁ。
(2023年12月31日読了)
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