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読書日記
『五人姉妹』 <旧>読書日記1540
2024年01月12日
テーマ:<旧>読書日記
菅浩江『五人姉妹』早川書房(図書館)
図書館で著者の本を検索していたら2005年発行の本書を発見。借りて見たら装丁が「博物館惑星」シリーズと似ている短篇集。しかも「博物館惑星」の続編に当たる短編も入っているとか。
先端科学がうみだす、さまざまな心の揺れを描いた珠玉の九篇…“やさしさ”と“せつなさ”の名手による洗練と成熟のSF作品集。というのが惹句である。
「五人姉妹」:成長型の人工臓器を埋め込まれた葉那子には、臓器スペアとして4体のクローンが用意されていた。その4人の姉妹と実際に会って会話する葉那子。
「ホールド・ミー・タイト」:常識的な30歳女性が年下の男性”部下”に抱く乙女心と仮想現実世界。
「KAIGOの夜」:介護される老人の役をするKAIGOロボットができあがるが、実は介護する側もロボットという人間のいないロボットだけの世界。
「お代は見てのお帰り」:息子の学習のためにアフロディーテを訪れたバートと息子のアーサー。しかし、アフロディーテは大道芸祭りの真っ最中。バートは息子を大道芸から遠ざけようと努力するが・・
「夜を駆けるドギー」:ネットとペットロボット「ドギー」が題材でcorps(死体)を名乗る少年の果たす役割。「逝って良し」「おまえもなー」という言葉がある意味懐かしい。
「秋祭り」:大規模農業プラントの後継者募集に応えた林絵衣子。彼女はあるものを捜しにここにやってきた。観光名物でもあるプラントの秋祭りで探しているものは見つかるだろうか?
「賤の小田巻」:大衆芸能役者入江燦太郎。息子の雅史は一時は親の後を継ごうとしたはずだったが今は商社の社長をしている。燦太郎はどうしてAIターミナルの審査に受かって入所できたのか。そこに遺書として遺された父の会心の舞いを見て雅史が判ったとは?
「箱の中の猫」:地球と宇宙ステーションという遠距離恋愛。SF的不条理で少しずつ離れていく時間。その状況の中で森村優佳と婚約者普久原淳夫は如生涯を過ごしていく。
「子供の領分」:記憶喪失の僕と4人の孤児仲間とマリ先生。山奥の療養孤児院。僕は彼らの役に立っているつもりだったのに。彼らが、僕に奉仕してくれていたのだ。
ハリウッド製の映画の影響のためであるかも知れないが、SFとは宇宙冒険大活劇である、と勘違いをしている人は多いのではないかと思う。しかし、私はSFも文学である、と考えている。文学としても成立しているものは数少ないけれど。一例を挙げれば、F・ブラウンの『天の光はすべて星』(1953年)を上げておく…2008年にハヤカワから復刊されている。
(2021年7月14日読了)
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