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読書日記
『「日本の伝統」の正体』 <旧>読書日記1539
2024年01月10日
テーマ:<旧>読書日記
藤井青銅『「日本の伝統」の正体』新潮文庫
「伝統」とか「伝統文化」とはなんだろう?という疑問から出発した本。「○○が我が社の伝統」とか「我が校の伝統」であればそれはその会社や学校が創られてからの伝統であるから限りがあることはすぐわかる。だが「日本の伝統」となるとどれぐらい続いていれば納得出来るのであろうか?江戸時代から続いて居れば伝統か、など著者はそれを真面目に探訪していて、「伝統的」な行事や物事が意外に短い歴史しか無いことも沢山あることを本書で示す。
いつ頃から続いていれば、「日本の伝統」でしょうか?
と、著者は問う。企業や家の伝統であれば100年も続いていれば立派なものだが、それでは「日本の伝統」とは言えないであろう、とも書く。
そして、判ることは「伝統」と言われるものの紀元や確立が案外若いことである。制度として制定されたり言われ始めた年を限定することは難しいけれども、その多くは何らかの思惑が働いて決まる。この思惑は政治的なものであることもあるが、多くは商売上の都合によるものである。
政治的な例が「皇紀」である。今年は皇紀2681年であり、ゼロ戦は紀元2600年に制式採用されたので零式戦闘機と命名されたことからも判る様に戦前は紀年法の基本とされてきたけれど、今はほとんど使われない。実はこれが言われ始めたのは明治6年(=西暦1873年=皇紀2533年)の政府による制定が元である。
夫婦別姓問題については、日本ではずっと別姓が続き、同姓が義務づけられたのは1898年(明治31年)の旧民法の制定によってであって「家制度」を背景としている。その前に出された1876年(明治9年)の太政官指令では「他家に嫁いだ婦女は、婚前の氏」を用いるとされていてそれはつまり別姓を指示(or支持)している。
商業的なものは、新しい「恵方巻き」の習慣や「バレンタインデー(にチョコレートを贈る慣習)」や少し古いものでは七五三の祝いと「千歳飴」など枚挙にいとまが無いほどである。とりあえず、本書では「日本の伝統」らしきものを50以上取り上げているが、実質的に全国化したといえるのはほとんどが明治以降であった。
なお、著者は日本の放送作家、作家、作詞家だそうで多くのTV番組、ラジオ番組に関わっているそうだ。
(2021年7月13日読了)
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