読書日記

『金曜日の本屋さん』 読書日記307 

2023年12月19日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

名取佐和子『金曜日の本屋さん』ハルキ文庫(図書館)

本を返しに行った図書館で久しぶりに文庫本の棚を見ていて発見した本。次の読書日記の本と共に2冊を借り出した。
なんと言えば良いのか、私は読書会というものを経験したことが無いに等しい(*)のであるが、まるで本と読書会をしている様な感じであった。

内容紹介によると、
ある日、「北関東の小さな駅の中にある本屋は“読みたい本が見つかる本屋"らしい」という
ネット上の噂を目にした大学生の倉井史弥。
病床の父に以前借りた本を返すように言われたが、じつは失くしてしまっていた。
藁にもすがる思いで、噂の駅ナカ書店〈金曜堂〉を訪ねる彼を出迎えたのは、
底抜けに明るい笑顔の女店長・南槇乃。倉井は南に一目惚れして――。
人と本との運命的な出会いを描くハートウォーミングストーリー、開店!

ということで全4章で取り上げられる本は以下の通り。
第1話{読みたい本なんか見つからない」…庄司薫『白鳥の歌なんか聞えない』と大手書店の御曹司、書店の紹介。
第2話「マーロウにはまだ早すぎる」…レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』と寿子と兼人の二転三転。
第3話「僕のモモ、君のモモ」…ミヒャエル・エンデ『モモ』に、朗読会と、子役の男の子と、金曜堂の店員の交流。
第4話「野原町綺譚」…梨本香歩『家守綺譚』と、かっぱと野原町の成り立ち、金曜堂誕生のいきさつ。

そして、あとがきの後に本書で名前の出て来た本20冊余りのリストがずらりと並ぶ。で、なんとなく隔靴掻痒を感じる理由は出てくる30冊近くの本の中で明確に読んだことがあるのは庄司薫『赤ずきんちゃん気をつけて』とケン・リュウ『紙の動物園』だけで、あとはカスッてはいるものの未読の本ばかりだった。

カスッているというのは,例えば庄司薫は「赤ずきんちゃん」に続いて「快傑黒頭巾」「大好きな青髯」「白鳥の歌」(題は省略して書いている)と4部作を書いているのだが、私は前述の通り「赤ずきんちゃん」は芥川賞受賞によって読んだけれども続編には興味がなかった。また、チャンドラーのフィリップ・マーロウものも何冊か読んでいるのだが、『長いお別れ』を確かに読んだかどうか覚えが無いから。本文中での話からは著者は確かにこれらの本を読み込んでいることは理解できるけれども、自分は読んでいないために読書会には参加できず傍観者にならざるを得ない。

と言うか、読書会とはこんなことをしているのか、というある意味でのあこがれを感じるが、現実世界ではこれからもおそらく参加しないだろうなとも感じた。また、「小説に関する小説」として入れ子構造をうまく使っていると思うけれども言及されている本を読みたくなるかと言えば、私は否定的である。

ああ、そういうこととは別に“読みたい本が見つかる本屋"というのは魅力的である。その秘密はこの書店の地下に設けられた膨大な書庫にあるのだが(正直に言えば、この書庫の規模では不足するとも思うけれど)、司書として、有能なアドバイザーとして女店長・南槇乃の存在はうらやましく思う。現状の私としては1に近所の図書館、2にamazonがその役目を担っているけれど・・
(2023年12月06日読了)
(*)大学時代に同級生と専門の本を共に取り組んだ事が2回あるけれども、いずれも序文に当たる部分を読んだだけである。



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