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読書日記
『鎌倉うずまき案内所』 <旧>読書日記1527
2023年12月12日
テーマ:<旧>読書日記
青山美智子『鎌倉うずまき案内所』宝島社文庫
著者には現在5冊の著書があるが、その3冊目。
各話の始まりはすべて一人称でそれぞれの主人公は葛藤を持っている。題名の通り、舞台は鎌倉であるがそれに特に意味は無い。鎌倉に住んでいたり修学旅行で訪れたり、たまたまやってきたりなのだが、道に迷ったり、同行者とはぐれたりして困惑していると・・
閉店している古ぼけた時計屋の脇に出ている看板には「鎌倉うずまき案内所」と下向きの矢印がある。矢印にそって階段を降りて店に入ると、ソトマキとウチマキという双子らしき爺さんが「はぐれましたか?」と問いかける。これが各話に共通の同じパターン。
2冊目の『猫のお告げは樹の下で』でも各話のスタート部分はほぼ同じパターンの繰り替えしであった。うーん、1冊ならともかくこの方式が2回目となると少し鼻につく。
で話は以下の全6篇、話ごとに年代が6年ずつ遡っていく。各話の主人公のそれぞれ悩みはほんわりとした話の流れで解決されていく。
2019年 蚊取り線香の巻:転職の悩み(今している仕事が気に入らない)
2013年 つむじの巻:息子の進路の悩み(子供には安定した道を進んでほしい)
2007年 巻き寿司の巻:結婚する上での悩み(マリッジブルーに近いかもしれません。)
2001年 ト音記号の巻:友達付き合いの悩み(ぼっちは嫌!)
1995年 花丸の巻:初志に帰れるか、仕事の悩み(承認欲求が強すぎて迎合してしまう)
1989年 ソフトクリームの巻:自己肯定感の悩み(俺の人生これで良かったの?)
各話に登場する人物が微妙に重なりあい、繋がりを持っている。そして最後の「ソフトクリーム」の巻」で6話のうち5話に名前の出てくる作家の黒祖ロイドが実は全体の主人公でもあることが判る。固定観念をはずせというのが何度もくり返される言葉であるが、まさにその固定観念が打ち砕かれる話でもあった。
なお、西暦で書いてあるので判りにくいが、1989年に昭和から平成に年号が替わり、2019年には平成から令和に替わっている。
(2021年6月22日読了)
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