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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第三部〜 (三百九十八) 

2023年11月21日 外部ブログ記事
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 武士のために玩具でもと思い立ち、珍しくはやめに帰宅しようと考えた。ぷよぷよする赤子のほほに、唇をふれたいのだ。小夜子のおっぱいをたらふく吸っている、武士のほほに吸い付きたいのだ。そして同じように小夜子の唇にふれ、小夜子をだきよせ、その耳に「世界一のしあわせ者だ、おれは」と、ささやきたいのだ。
「専務、あとはたのむぞ」 一階で竹田との打ち合わせ中の五平に声をかけた。「きょうはなにごともないことを祈りますよ」 ここ二、三日のあいだ、五平に言わせれば「しょうもないことで」ということになるのだが、配達人の態度が横柄だという苦情がはいったという。連日の荷物量に音をあげたひとりが、店先に乱雑にほうり投げていったというのだ。本人に確認をしたところ、いつもとはちがう行動をしてしまったという。
「どこに置きますか?」と確認をせずに、一存で軒先の端に置いてしまった。けっしてほうり投げたのではなく、キチンと置いてきましたと弁解した。また、「毎度!」「ごくろうさん」のあいさつを怠ったことを報告した。本人に言わせると「毎度」とは言ったものの、小声になってしまったので聞こえなかったと思うとこたえた。いつもの倍ちかい量の配達におわれて、つい相手の返事を確認しなかったと告白した。竹田としても人員配置の責めを感じはするものの、キャパオーバーな状態がつづいていることに危惧感は持っていた。どうしてもの場合は服部に応援を頼み、配達代行をさせていたときのことだった。
 比較的あたらしい取引先であることから、竹田みずからが謝罪にまわるための相談を五平としていたところだった。「そんなもん、次の配達のときにでも本人にあやまらせればいいだろう」。武蔵としてはこの時期に竹田をたとえ半日でも留守にさせることはまずいと考えた。しかし竹田の答えはちがい、武蔵をおどろかせた。「忙しいときだからこそ、じかにあやまってきます。あたらしい取引先だからこそ、まわってきます」「そうか、わかった。しっかりと謝ってきてくれ」“竹田も成長したな。いやこれは俺がまちがってた。竹田に教えられたな” 「おつかれさまでした、社長」。やりとりを聞いていた五平が、ニヤニヤと武蔵のうしろについた。 「シャチョー、おつかれさまです」。女性社員たちがいっせいに、ニヤニヤと声をかけてくる。「なんだ、なんだ、おまえら。全員で声をそろえることはないだ、、、あ、このやろー。勘ぐってやがんな。ちがうちがう、武士にオモチャを買うんだよ。小夜子のごきげんとりじゃねえよ」 それでもニヤつく女性社員たちには、武蔵のことばを真にうける者はいない。
「まったく、うちの女どもは。五平、おれのことをスケベ大魔王だなんて言いふらしてないだろうな」 いそがしく伝票を繰ったり帳簿に書き込みをする社員たちの机の間を歩きながらこぼした。「いえいえ、とんでもない。今じゃ、武士ぼっちゃんがお生まれになられからは、超真面目人間だと言ってありますって」 考えすぎですよ、それとも身に覚えがありなさるんで? 言外にそんなことを感じさせる。「どうもお前のことばにゃ、実が感じられねえんだよ。まあいい、あとはたのむぞ」「へい、行ってらっしゃい。お気をつけて」

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