読書日記

『かたばみ』 読書日記282 

2023年10月30日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


木内昇『かたばみ』KADOKAWA(図書館)

中日新聞、東京新聞、北海道新聞、西日本新聞、神戸新聞(これらの新聞社新聞三者連合を形成しておりは記事の相互利用や新聞小説などを共通化している)に連載された小説。

本書の表紙裏に、題名のかたばみについての以下の説明がある。
かたばみ:カタバミ科の多年草。クローバーのような葉を持ち、非常に繁殖力が強く、「家が絶えない」に通じることからね江戸時代にはよく家紋にも用いられた。花言葉は「母の優しさ」「輝く心」など。

内容紹介は
「家族に挫折したら、どうすればいいんですか?」
太平洋戦争直前、故郷の岐阜から上京し、日本女子体育専門学校で槍投げ選手として活躍していた山岡悌子は、肩を壊したのをきっかけに引退し、国民学校の代用教員となった。西東京の小金井で教師生活を始めた悌子は、幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一と結婚するつもりでいたが、恋に破れ、下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。やがて、女性の生き方もままならない戦後の混乱と高度成長期の中、よんどころない事情で家族を持った悌子の行く末は……。

というものであるが、何しろ550ページもある大作がこんな数行で紹介しきれるものではない。と言って、私が簡単に要約できるものでもなく、言えるのはせいぜい
第一章 焼け野の雉(キザス)
第二章 似合い似合いの釜の蓋(フタ)
第三章 瓜(ウリ)の蔓(ツル)に茄子(ナスビ)
という三章に別れているぐらいのことしかない。

第一章では主人公の山岡悌子が国民学校の代用教員となり、小金井(現在の武蔵小金井市)に下宿しての教員生活が主に語られる。第二章では、第一章にも登場していた中津川権蔵と山岡悌子が戦後の混乱の中で結婚するまでの経過といきさつが語られる。第三章では前章末で悌子と権蔵の養子となった清太が自分の出生の秘密を知らずに育っていき、ひょんなことからそれを知って悩む話が中心となる。

ちなみに悌子は「背丈五尺七寸、体重二十貫目」(今の数値で172cm、75kg)という大柄であり、体力は有り余っている。それに対する権蔵は徴兵検査の時に肋膜を病んでいて丙種合格、戦時下で徴兵もされずにいて肩身が狭い。もちろん力仕事は出来ない。実は早稲田大学を卒業しているがそれを口外することもなく悌子と同じ下宿に(疎開してきて)住んでいる母の富枝と同居することになる。

連載小説という形からか、叙述は簡明で判りやすく、悲惨な場面もほぼ無く、サクサクと読めて先ほど550ページと書いたが、あまりにも面白く、実はほぼ2日で読み終えた。最後に本書中に「かたばみ」について書かれているのは確か三ヶ所。その最後の場所にかたばみの花言葉が「母の優しさ」「輝く心」と出ている。まさに悌子と清太である。
(2023年10月5日読了)



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