読書日記

『赤いモレスキンの女』 <旧>読書日記1505 

2023年10月29日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


アントワーヌ・ローラン『赤いモレスキンの女』新潮社クレストブックス(図書館)

モレスキンと言うのは伝説の手帳のブランド。原題は「赤い手帳の女」であるが、邦訳では手帳のブランド名を使っていて、それが少し謎めいた感じを出している。

女性が自宅に帰る直前に男に襲われてハンドバッグを奪われる。鍵も失ったために自宅前のホテルに泊めてもらうが、襲われた時に受けた怪我がもとで意識不明の重体となる。一方、書店経営者のローラン・ルテリエは朝の散歩中、ゴミ箱の上に捨てられたハンドバックを見つけ、警察に届けようとするが、警察は忙しく店を開ける時間までには解放されそうもない。ということでローランはバッグを持ち帰る。

という発端で、ローランは一日の仕事を終えたあとにハンドバッグの中味を探る・・が、持ち主に繋がる様な手がかりはない。かろうじて見つかるのは「ロールへ、雨降る中、私たちの出会いの記憶に」と書かれた著者のサイン入りの本。ここからスタートしてローランはロールの正体を一歩ずつ探っていく。

やがてローランは彼女の姓を突き止め、彼女のアパートに電話するが何度かけても誰も出ない(その頃ロールは入院中)。意を決して、アパートを訪れたローランの前に現れるのは入院中のロールの猫の世話をしている(ロールの友人)ウィリアム。ウィリアムはローランをロールの恋人と勘違いして自分が出張中の猫の世話を頼む。

やがて、ロールは意識を取り戻し、日常へと戻ろうとするがウィリアムはハンドバッグが戻っていることを告げ、ロールはそれに添えられたローランの手紙を読む。

ここからはロールがローランを探す話に変わり・・ついに2人は顔を合わせることになる。という大人のおとぎ話であった。

ところで2人を繋ぐ物の一つに読書がある。サイン入りの本の著者(実在の作家パトリック・モディアノ)はローランが尊敬している作家であるなど、作中にいくつもの書名と作家の名が溢れる。中に村上春樹と漫画家の谷口ジロー(フランスでも著名らしい)があるのはご愛敬だが、半分以上はその名を知らないのが残念であった。

なお、訳者あとがきによると作者名Laurainと書店員Laurentとは綴りも違えば微妙に発音が異なるらしいが作者と主人公が共にローランというのは恐らく作者の意図があるのだろう。もう一つ、題名carnet rougeとローランの書店cahier rougeの類似もある。
(2021年5月7日読了)
金箔職人ロール・ヴァラディエは自宅に帰る直前に男に襲われてハンドバッグを奪われる。鍵を奪われた彼女は自宅前のホテルに泊まるが、翌朝、襲われた後遺症で意識を失っていた。一方、書店経営者のローラン・ルテリエはゴミ箱の上に放置されたハンドバッグに気づいて拾う。ハンドバッグの中味を手がかりにローランは持ち主を特定する。フランスらしい恋愛小説。訳者は書店員Laurentと作者名Laurainの類似を指摘しているが、題名carnet rougeとローランの書店cahier rougeの類似も意図的ではないか。(読書メーターの感想より)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR







掲載されている画像

上部へ