読書日記

『江戸の空 水面の風』 読書日記280 

2023年10月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

梶よう子『江戸の空 水面の風』新潮文庫

みとや・お瑛仕入帖シリーズの4冊目であるが、3冊目の『はしからはしまで』が出たのは2021年9月(単行本としては2018年)なので文庫としては2年ぶりだが、このシリーズとしては5年ぶりということになる。前巻では苦楽を共にしてきたお瑛の兄の長太郎が急死し、1人になったお瑛が新しい生活を送り出すという内容であったが、本巻の内容案内では

能天気だが優しかった兄の長太郎を亡くしたお瑛だが、茅町のお馴染みの面々に助けられ、いつしか成次郎と夫婦となり、穏やかに暮らしていた。そんな時、圭太という「苦労人」の男が現れる。お加津が営む『柚木』の新しい奉公人だ。礼儀正しく、気配りを忘れない圭太を、お加津は褒めちぎる。だが、お瑛の胸はざわついた。私が知っているお加津さんは、こんな人じゃなかった。何かおかしい……。知らぬうちに、『柚木』は変わっていき、お瑛の予感は的中した。本当のことが知りたくて、お瑛は自慢の猪牙舟で大川に漕ぎだしていく。「みとや・お瑛」第二シリーズ、お瑛の新しい活躍がはじまる!

ということで、いきなり8年が過ぎ、お瑛には夫がいて夫婦となり子供もいるのであるが、その過程はほとんど描かれていない。シリーズ名は変わらないものの新装開店し、どうやら作者も心機一転しての新刊らしい。本巻での中心はお加津さんと言って良く、そのお加津さんと圭太との関わりが「三つ揃って」「さわりのゆらぎ」「岡目八目」「風を鎮める」「残り蝉」「鏡面の顔」という6篇通じての話となる。

単純に言えば、圭太がお加津を騙していたということになるのであるが、騙される側のお加津の心情も哀しい。まあ、解決編と言えるのは最後の「鏡面の顔」であるが、一体この難しい問題を解決するのはどうやって?という楽しみもあり、久しぶりにお瑛が舟を漕ぐシーンもあり、懐かしくも新しい展開が楽しめる本であった。
(2023年10月1日読了)



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