読書日記

『「違和感」の日本史』 <旧>読書日記1503 

2023年10月25日 ナビトモブログ記事
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読書日記1503
本郷和人『「違和感」の日本史』産経セレクト

著者は東京大学史料編纂所教授である。この史料編纂所というのはここがまとめた史料が無ければ歴史研究が出来ないというほど重要であるが、外見的には非常に地味な仕事をしている。史料編纂をして何の役に立つの?と問われれば「歴史研究の基礎となる」と答えられるけれど、「歴史を研究して何の役に立つの?」という問いに対しては一般向けの判りやすい答えは無い。人文科学の研究というものはそういうものであって、直接何かの役に立つわけでは無い。基礎科学も同じで直接何かの役に立つことはない。

しかし、そのような研究の厚みがその国の文化の厚みであり、その国の発展と繁栄とに資するものでもあって、かつまた繁栄無くして厚みのある研究はできないと私は考えている。

その著者は余技として、一般向けの歴史書を数多く書いている。自分の研究を基盤としているだけにその言説はかなり信頼できると思っている。本書は内容紹介に寄れば、
人気歴史学者が「威勢のいい学説」を疑う
というものであるが・・
〈主な内容〉
第1章 江戸時代に鎖国はなかったのか
第2章 2代将軍が天皇に激怒の「違和感」
第3章 信長の「天下」とは京都周辺だけか
第4章 なぜ西郷どんは大隈重信を嫌うのか
第5章 「男と女」の立ち位置の行方
第6章 天皇をめぐる歴史の謎
第7章 夏目漱石のワケありな門人たち
第8章 人物を語らない歴史研究でいいのか
部分的には「簡単な説明の方が(複雑に背景説明をするものより)汎用性が高い」という「オッカムの剃刀」の変形や「日本は一つでは無い」という考え方など納得出来るものもあるのであるが、どうも内容的には「違和感」のあることについてのみ書いている様では無い(私はこのこと自体に違和感を感じた)。題とは異なるエッセイ風の軽い読みものとも感じるし、題で示される様な主張にはっきりと答えるものも少ないように感じるのである。だが、その理由はこの本は産経新聞に連載中のコラム「本郷直人の日本史ナナメ読み」(*)に掲載されたものをまとめたものということであった。それも、順番の入れ替えはあるけれど取捨選択はして居ないように思えた。
(2021年4月29日読了)
(*)コラムの内容は以下のURLで読める。
https://www.sankei.com/premium/topics/premium-33297-t1.html#1



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