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読書日記
『藩邸差配役日日控』 読書日記277
2023年10月20日
テーマ:読書日記
砂原浩太朗『藩邸差配役日日控』文藝春秋(図書館)
『いのちがけ』『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』に次ぐ著者の4冊目の本。本書の前に神山藩シリーズの3冊目である『霜月記』が出版されているが図書館では予約が多く読む順番が逆転してしまった。本書では神山藩から神宮寺藩へと舞台を移している。また、前の3冊はどれもみな、いまいちな点を感じたが今作はうまくまとまっていた。
内容紹介によれば
『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』の著者による、清冽なる時代小説
消えた若君と、蠢く陰謀
その時、男は――。
江戸藩邸の“なんでも屋”――藩邸差配役・里村五郎兵衛
誰にもできぬお役を果たすのが、勤めにございます
里村五郎兵衛は、神宮寺藩江戸藩邸差配役を務めている。陰で“なんでも屋”と揶揄される差配役には、藩邸内の揉め事が大小問わず日々持ち込まれ、里村は対応に追われる毎日。そんななか、桜見物に行った若君が行方知れずになった、という報せが。すぐさま探索に向かおうとする里村だったが、江戸家老に「むりに見つけずともよいぞ」と謎めいた言葉を投げかけられ……。
最注目の時代小説家が描く、静謐にして痛快な物語
ということになる。全体は「拐(カドワカ)し」「黒い札」「滝夜叉」「猫不如(ネコシラズ)」「秋江賦」の5篇からなる。
「拐し」は藩侯の10歳の世子が行方知らずになる話、「黒い札」は藩の御用商人を決める入札の不正を疑う話、「滝夜叉」は藩邸で新しく雇った女中は怪しげな魅力を放ち、男同士がいさかいを起こす話、「猫不知」は、藩侯の正室の愛猫が行方知らずとなり、その行方を世子が母親に教える話、そして、江戸藩邸の2人の実力者の角逐に巻き込まれる「秋江賦(しゅうこうふ)」で意外な事実が明かされる。
1969年生まれであるから、若手作家とは言いづらいものがあるが、歴史解説的なものや他の何人かと同じテーマで描く競作ものなどを除けば、まだ時代小説として単行本は5冊しかないので、若手とも言えるかもしれない。少しずつ力を付けてきている様な感じがあり、将来が楽しみである(上から目線だなぁ)。
(2023年9月25日読了)
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