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『出世払い 親子相談屋雑記帳』 読書日記275  

2023年10月16日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


野口卓『出世払い 親子相談屋雑記帳』集英社文庫

「よろず相談屋繁盛記」シリーズ5冊、「めおと相談屋奮闘記」しりーず11冊を引き継ぎシリーズ名を「おやこ相談屋雑記帳」と変えての1冊目。シリーズ全体としては17冊目にあたる。こうして書いて見ると長続きしているなぁ、と思う。

内容紹介と言うか、宣伝文句では
人気シリーズ新装OPEN!
相談屋&将棋会所のにぎやかな日常を描く定番の“ちょんまげもの” いきなり文庫!

招き猫が招く手、右左の違いとは(「猫は招く」)。気の合う相談客と盛り上がって帰宅した信吾が犯した大失敗(「山に帰る」)。いつも声を掛けてくる老婆のある変化の理由(「サトの話」)など、盛りだくさんの全5話を収録。大病からの生還を機に動物と話せる力を持った信吾と妻の波乃が営む相談屋と将棋会所を舞台にした、笑いあり涙ありの人情物語。令和の定番時代小説、三たび看板を掛け替えて開幕!

ということで本巻は「「猫は招く」「山に帰る」「サトの話」「同志たれ」「出世払い」の5編からなる。初めの3編は上の紹介に任せることにして、「同志たれ」は信吾の相談屋が成功しているので、その真似をして相談屋を開いたものたちの話。前振りとして瓦版書きの天眼の裏の仕事が書かれている。で、結局、あらたな相談屋たちはうまく行かず、裏商売に手を出して失敗する。そうした中で雲似郎という男だけは同志たり得るかも知れないという話。「出世払い」は2年半前に相談を受けた客が改めて謝礼を支払いにくる、という話であるが、この中に言葉やことわざの意味が変化すること(例えば「情けは人のためならず」)が織り込まれている。

私は「出世払い」という言葉は「今は払えないけれど、出世したら払います」という申し出であると理解していたが、この話の中ではこの言葉が金を融通する側が援助の口実にすると変化し、その結果、融通して貰う方が言うと、「有能な自分に先を見越して投資してもらえないか」という一種の強要の意味に取られるということらしい。うーん、なんだか穿ち過ぎの様な気もするがそういう解釈もあるのか、と思った。
(2023年9月21日読了)



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