読書日記

『高瀬庄左衛門御留書』 <旧>読書日記1498 

2023年10月15日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』講談社(図書館)

内容紹介によれば「神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十を前にして妻を亡くし、息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。息子の嫁・志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門に襲いくる。」という話である。

この内容紹介を読んでいなければ、いや、読んでいても導入の部分は訳が判らなかった。高瀬庄左衛門とは何者か、それが掴めないのである。

冒頭、庄左衛門は「非番」であるためにゆっくり寝ていて、これから郷村廻りに出かける息子の啓一郎の出立にかろうじて間に合う。小者の余吾平とともに啓一郎が出たあとには啓一郎の妻である志穂の作った朝食を食べながら亡妻の延を思い啓一郎夫婦の仲を思う。朝食後、庄左衛門はふと思いつき志穂を連れて家を出て、海で写生を始め、ここで庄左衛門と絵の関わりが読者に示される。

翌日または翌々日、余吾平の知らせによって啓一郎が事故死したことを知らせられた庄左衛門は葬式の後に志穂を実家へ戻らせ、余吾平も辞めさせて1人暮らしを始めるが、志穂は啓一郎の生活を案じて、絵を習いにくるいう名目で庄左衛門の非番の日に訪れることになる。

次の章で庄左衛門は志穂の憂い事を聞き、その流れで、旅姿の武士に刀を向けていた志穂の弟の秋本宗太郎と刃を向け合うことになるのであるが、しがない郡方の役人として勤めているはずの庄左衛門は事務仕事が主のはずなのに(郷村廻りの役目があり足腰が丈夫であるのは判るが)意外と刀を使えるのである。これで、いよいよ高瀬庄左衛門とは何者なのか判らなくなる・・ここまででおよそ60ページ、全体の5分の1弱でああり、話の行く先は見えてこない。まあ、次第に藩の政治情勢やら陰謀などは明らかになっていくのである。

著者は作家としてはまだ売り出し中と入っても良いくらいのキャリアで、どうやらこの本が2冊目?長篇としては初めての著作?ということで、書き出し部分をもう一度描き直せばより読みやすくなりそうな気がするけれどもこの本自体は面白かったし、将来の期待も出来る。また、この本は御留書シリーズとして続巻が出るとの噂もあるようだ。
(2021年4月17日読了)



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