読書日記

『騙し絵の牙』 <旧>読書日記1490 

2023年09月29日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


塩田武士『騙し絵の牙』KADOKAWA(図書館)

この本は映画化を前提とし、その場合に主人公を俳優・タレントの大泉洋を対象にした宛て書きだそうである。何しろ、文庫の後書きの解説で大泉洋本人がそう書いている。ただ、私は本書中の写真を見て、この人が大泉洋であると知り、まあなんとなく顔は見たことがあるな程度の知識しか無かった。

そして今年の3月26日より同名の映画が公開されている。ただ、私はこの映画にはほとんど興味は無く、映画化に伴っての宣伝からちょっと読んで見ようと図書館に予約したことを忘れて書店にならんでいるのを買ってしまった・・その次の日に図書館から貸し出し準備ができたという連絡がきて、こりゃまいったなぁ。

雑誌が売れないこと、小説も映画化、漫画化などの二次使用を考えなければ出版できないこと(その二次使用の中にパチンコ台があるとは知らなかった)、紙の本からデジタル化への波など、出版界の現状を読ませてくれる内幕本として私は楽しんだ。もう一つ、本や雑誌を作る過程における編集者の役割についてもある程度知ることが出来たけれど、内容的にはそれだけのものでしかない。

と言うか、出版を守るための主人公の奮闘を描いている様に見せているけれど、著者に「文化としての出版」への思いがあるとは思えない。結局、出版を「金になる」かどうかという視点でしか見ていない様に思えた。旧ソビエト連邦が崩壊して以来、資本主義が資本の論理を突き詰めるようになり、資本主義の弊害が改めて見えてくると同時に我が国でもそれは進行していて、職業作家にも及んでいるのであろう。
(2021年4月2日読了)



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