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敏洋’s 昭和の恋物語り

愛の横顔 〜100万本のバラ〜 (十) 

2023年09月28日 外部ブログ記事
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 一旦は仲直りができたはずだった。スペイン村で諸々のアトラクションを楽しみ、ようやくいつものふたりに戻った。しかしジェットコースターでのことは、正男の意外な一面を見た思いで、一抹の不安をおぼえさせた。急降下する際に「ママ、ママ!」と絶叫する正男、笑いをとるためとはどうしても思えない沙織だった。
 さらに正男の不用意なひと言で、またしても反目しあうことになってしまった。チャペルウエディングが執り行われていたサンタクルス教会で「ステキ! ここでの挙式なんか、想い出にのこるでしょうね」と、目をキラキラさせて沙織が立ちどまった。
沙織を喜ばせるつもりで漏らしたであろう正男の「あげちまうか、きょう」が、沙織には許せないことだった。あまりに軽くいう正男に、沙織との結婚というものが、現実問題としてとらえられていないと感じられたのだ。
? フラメンコショーを観るべく会場に入ったふたりだが、踊りを楽しむという雰囲気ではなかった。そこかしこで会話の花が咲いているというのに、たがいに視線をあわせることなくまたことばを交わすこともなくいた。出された飲み物をからにした正男が席を立とうしたとき「これからショーがはじまるのよ」とひき止めた。
 舌打ちしながら席にもどる正男に「マナーをわきまえてよ」と小声でいった。無言のままステージに目をむけている正男に腹がたつが“まだ子どもなのよ、正男は”と己にいいきかせる沙織だった。父親は官僚であり母親も華道の師範だ。絵に描いたようなセレブの家庭なのだ。多少の我がままは仕方ないとあきらめている沙織だ。
? いよいよショーが始まった。フラメンコに興味を覚え始めた沙織は、目を見ひらいてステージを凝視した。正男には奇異な感じがしている。正男の知るフラメンコは激しいリズムを伴うもので――腰をふりふり、ときに胸を大きくゆらせて、観客を扇動する――実のところ、サンバとフラメンコが混同してしまっている。
 流れはじめたギター、あわせるように手をたたく者がいる。もの悲しくも切なくとどいてくる。重苦しい気持ちにおそわれた正男、チラリと沙織に目をやった。ステージにしっかりと視線をそそぎ、演奏に聞き惚れている。膝の上であわせられている手が、正男には邪魔だ。キラキラと光って見える足が、正男にお出でお出でと呼びかけているように思える。しかしあわせられている手が、正男を拒否している。
 とつじょ、万雷の拍手が会場にひびいた。その登場を待ちかねたように、沙織もまた激しく手を打ちはじめた。なにごとかと目を上げると、四人のダンサーがステージに並んで踊りはじめた。目をこらしてみると、外人のようだ。沙織の耳元で「有名なのか?」と聞くと「黙ってて!」と、ピシャリ!

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