読書日記

『中年男ルネッサンス』 <旧>読書日記1488 

2023年09月25日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』イースト新書

著者のうち田中俊之は975年生まれ、社会学なかでも男性学・キャリア教育論を主な研究分野としている。もう1人の著者の山田ルイ53世も1975年生まれでお笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ担当であり、『一発屋芸人列伝』で文筆家としても立とうとしている。

その2人が山田ルイ53世がパーソナリティであるラジオ番組で知り合い、同年齢ということもあって今回の対談に至ったわけである。

はじめに 山田ルイ53世
第1章 <中年男>がぶち当たる壁
第2章 僕らの歳で友達っている? --人間関係とコミュニケーション論
第3章 やっぱりオンナって難しい --女性とエロ論
第4章 僕らどうやって生きていこう? -仕事と働き方論-
おわりに 田中俊之

「一発屋」として中年男の生き方を模索する芸人と、社会学・男性学の視点が交差するなか、人間関係のコミュニケーション論、女性との付き合い方、仕事との向き合い方などを切り口に、中年男の生きづらさとその乗り越え方が浮き彫りになってくる対談本。上に書いたこれらの章題では感じ取れないかも知れないが、この本は意外と真面目である。ちなみにこの本の初版が出たのは2018年であり、いま巻き起こっている(実質としての)男女平等への動きの兆しが現れ始めた頃である。

ジェンダー(社会的意味合いから見た、男女の性区別)にもとづく偏見や不平等は気づきにくいが男性にもあって「男らしさ」と言う言葉で求められる社会的属性と偏見が中年男性には厳しいという話から始まる本書もジェンダー論へとつながっている。

ある意味面白かったのは冒頭に近い部分で出てくる「40男それなりのもの持っていないとダメ」問題。40代になると見栄というか、体裁を整えるためのコストが上がるというもので、本来の自分の収入や地位、評価よりも背伸びをしなくてはならないという暗黙のプレッシャー…面白いのは社会学者である田中氏がそれを話題に乗せること。

あとがきで田中俊之が「物事を斜めから見ることに慣れているお笑い芸人と社会学者はその術(スベ)を提供するのに適任だったと自負している」と書いていて、「時には現実から目を逸らしてもよい、加齢による衰えに抗うのが難しければあまり深刻に受け止めないようにする。人生の意味や価値については、一旦脇に置いておく。絶望こそ笑い飛ばす。」とまとめる。

中年男の生きづらさに対する対談の回答は「とりあえず生きる」となるのである。
ま、私に言わせると「中年なんてまだまだ若い」なんだけどね。
(2021年3月30日読了)



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