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読書日記
『ギリギリ』 読書日記264
2023年09月24日
テーマ:読書日記
原田ひ香『ギリギリ』角川文庫
前書と共に書店の店頭で見かけて買った本。
妻、夫、元姑。奇妙な三角関係が織りなす極上の<人間関係小説>。
という前置きから始まる内容紹介。
夫の一郎太が過労死し、寂しさを紛らわすかのように同級生の健児と再婚した瞳。脚本家の卵である健児は、前夫の母・静江と妙に仲が良く、それが瞳は気に入らない。ある日、瞳は家で健児が書いた脚本の草稿を見つける。静江の伯母の思い出話をもとに構成したというその脚本を読むうちに、自ら選んだ「再婚」という選択に疑問を感じるようになり……。妻、夫、元姑。奇妙な三角関係が織りなす極上の<人間関係小説>。
「アナログ」「モヒート」「スカイプ」「シナリオ」「ギリギリ」の5篇による連作短篇。
「アナログ」は健児視点の話で、健児と静枝が親しくなっていく過程が描かれる。時代は地上波がアナログからデジタルに変わった頃の話である。平行して脚本家を目指す健児の書いたプロットがディレクターに気に入られ発展させようということになる。
「モヒート」は妻の瞳視点。過労で急死した元夫である一郎太の不倫相手だった冴子が出てくる。冴子と初対面の時にうっかり名刺を交換したために夫の死後も何故か何度か会うことになっているが瞳にとってそれはストレスでしかない。なお、この話の冒頭に瞳が小学生の時に仲良くしていたさっちゃん(沙知絵)との偶然の邂逅
がエピソードとして挟まれている。
「スカイプ」は一郎太の母である静江の視点。静枝が行っていた英会話教室の縁で外国人と日本語会話をするというボランティアを始める。それもスカイプを通してだ。全くのアナログ人間である静江はPCの設定やら何やらを英会話教室の高柳と健児に手伝ってもらって(いや、すべて設定して貰って)始めるが意外に楽しく続けられている。
「シナリオ」は再び、妻の瞳の視点。一郎太の回想から始まる。そして、夫の健児が今書いているシナリオをたまたま読んでしまい、ショックを受ける。それは大戦中に結婚した夫婦の話で夫は出征して戦死。妻の喜和子は夫が帰ってくると信じて再婚しないという話であり、それが自分を非難しているかの様に感じたからだ。この章の最期で瞳は健児に置き手紙をして出ていく。
「ギリギリ」は健児視点がもう一度。健児のシナリオは成功する。と言うか、ほぼこれからの活躍が約束される。そして、最期に題名のギリギリの意味が明かされる。
すらすらと読めるけれど内容は簡単にはほぐせない、改めて考える必要のある話であったと思う。
(2023年9月4日読了)
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