読書日記

『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』 <旧>読書日記1487 

2023年09月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


尾崎世界観など著者77人『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』左右社(図書館)

昨年4月コロナ禍により、緊急非常事態宣言が発せられた時、仕事をテーマにした本を作るべく77人のさまざまな職業の人に4月の日記を書くように依頼し、それらをまとめた本。この本についての書評や記事も多く、編集の視点がユニークなこともあって図書館に予約したらけっこうな数の予約待ちがあって実際に借りるまで3〜4ヶ月かかった。職業の内訳は以下の通り(各著者の名は省略した)。

はじめに
I 売る
 パン屋、ミニスーパー店員、惣菜店店主、書店員、製紙会社営業職
II 運ぶ
 ごみ清掃員、運送会社配達員、タクシー運転手、
III 闘う
  ミュージシャン、ライブハウス店員、純喫茶店員、映画館副支配人、女子プロレスラー、留学生
IV 率いる
 ホストクラブ経営者、校長
V 添う
 葬儀社スタッフ、馬の調教師、水族館職員、教師、美容師、ピアノ講師、客室乗務員、介護士
VI 描く
 イラストレーター、ドイツ在住イラストレーター、画家、漫画家、漫画家、漫画家
VII 書く
 小説家、小説家、校正者、作家・広告制作企画者、俳句作家、文筆家、ライター、評論家
VIII 聞く
 夫婦問題カウンセラー、精神科医、文化人類学者、ジャーナリスト
IX 創る
 映画監督、舞台人、劇団 劇団KAKUTA(14名の交代日記)、メディアアーティスト、美術家、振付家、写真家、落語家
X 守る
 内科医、歯科医、薬剤師、保育士、専業主婦、ブック・コーディネーター
XI 繋ぐ
 旅行会社社員、イラン観光業、台湾の蕎麦屋経営者、IT企業社員、美術館館長
XII 導く
 農業指導者、経営学者、占星術家
コロナ年表 二〇二〇年四月一日〜三〇日

総ページ数は440ページを越えていて分厚い。ただ、1人当たりの日記量にすれば10ページ足らずだから、読みやすいだろうと思って読み出したが、なんとも読みにくく一日に数十ページしか読めず10日余りかかった・・理由を考えて見ると、この本には「わたしたちの緊急事態日記」という副題がついていて、各人の日記内容は確かに違うけれど全体のトーンが単調なのである。

今になって思えば、毎日の感染者数が全国で数百人程度(4月は最高でも4月9日の594人:この日の感染者数がピーク)であった。ちなみにこの1年間では今年1月8日の7863人が最高だから、その1割にも達していない。現状から考えれば可愛いものである。この間にマスク不足から始まったアベノマスク問題とか、給付金の対象と金額が決まらなかった上、実際の配布も酷く遅れたこととか、政府の不手際も多かったと思うのであるが、身の回りの日記ばかりと言ってもも良く、具体的な数字やデータに触れたものも最後の農業指導者と経営学者ぐらいでその点が物足りないと思う原因かもしれない。

あるいは目次の職の一覧を見ればわかる通り、給与生活者は少なく、個人経営またはフリーランスが多い。漫画家や作家などのフリーランサーが「居職だし、収入も一定していないから、金銭的にはいつもと同じだが、知り合いと会って飲めないということがこんなにも辛いことか。気軽に出かけられるというのは大切なことだったんだ」とほぼ異口同音に書いている。同じ主旨の話を何回も読むことがこんなにも苦痛なのか、と皮肉の一つも飛ばしたくなってしまう(笑)。

職種や分野の違う会社に勤めるサラリーマンなどもう少し広い範囲の人選は出来なかったのかというのは無いものねだりなのだろうか。編集の意図や良し、書き手が不足という感じ。もう一度、今度の4月に同じことを繰り返して貰うと良いかも知れないと思ったりもする。
(2021年3月28日読了)



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