読書日記

『海の向こうでニッポンは』 読書日記261 

2023年09月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記


井上章一『海の向こうは』平凡社新書(図書館)

週刊誌の書評に載っておりそれに釣られて図書館で借りた本。

広告文では以下の様になっていて・・
ドイツの盆栽、アメリカのテリヤキ、西陣織でつくられたイスラム服、南洋の伊勢神宮、「京都銀行」の本店がバンコクに、ブラジルでは日本の新宗教が大流行?! ことば、音楽、プロレス、建築、宗教、歴史、マンガ、アニメ、食、酒……。筆者が長年目撃してきた、日本の文物が海外でかたちを変える光景。そこには現地に適応した驚きの「ニッポン」があった。日本から海外への文化の広がりに光をあて、日本そのものをとらえなおす。

目次は以下の通り。
《目次》
第一章 ベトナムから盆栽へ
第二章 ニッポンからサツマまで
第三章 音楽七変化
第四章 悪役レスラーニッポン
第五章 宗教は世界をめぐる
第六章 建築がつなぐ世界とニッポン
第七章 幻想と欲望の日本史
第八章 ことばとアニメの底力
第九章 酒と食は海を越え
あとがき

ということで期待して読み始めたのであったが、ひとつひとつの文が2ページしか無くどうにも据わりが悪い。こういうことがあったとは書いてあるが深く突っ込んだ話では無い。どうして考察が甘いのかと思えば、著者の後書きによると産経新聞夕刊に2018年5月〜2022年に掲載されたコラムだという。また、ときたま3ページの文があるがそれは共同通信の「ニッポン七変化」かの抜粋だと言う(掲載は2017年4月〜2018年3月、なお、本書は2023年5月刊である。)

ああ、これは深い話になりようが無い。確かにニッポンの文化が海外にひろまりつつあることは判る。その上で日本の産物が海外に出て思いも寄らない変化を遂げることもあるだろう。原型を留めないような変化もあるだろうし(それは逆に日本が受け入れた文物や習慣についても言えること)、思い違いや勘違いによるものもあるだろう。ただ、それをポツンポツンと提示するだけでは価値が無いに等しい。例えば第五章で照会されることにブラジルで日本の新興宗教が大人気とあるのだが、「ブラジル 日本新宗教」と検索するだけでいくつもの研究書が刊行されている。(一例として一橋大学研究…刊行年月不明20世紀末ぐらいか…が以下のURLで読める)
https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/5734/kenkyu0230101610.pdf

つまり、本書の役割は単なる入り口にしか過ぎないし、話題提供でしかない、と判断した。

なお、著者については以下の通りであるが建築史家というよりは風俗史研究家としての側面が強いと思われた。
《著者紹介》
建築史家、風俗史研究者。国際日本文化研究センター所長。1955年、京都市生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞。著書に『霊柩車の誕生』『美人論』『日本人とキリスト教』『阪神タイガースの正体』『パンツが見える。』『日本の醜さについて』『大阪的』『プロレスまみれ』『ふんどしニッポン』など多数。
(2023年9月1日読了)



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