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読書日記
『エストニア紀行』 読書日記259
2023年09月14日
テーマ:読書日記
梨木香歩『エストニア紀行』新潮文庫
5月1日にエストニアという言葉に惹かれて購入した本であるが半分ほど読んで4か月ほど放置していた本。エストニアと言う国はご存知であろうが、バルト3国のひとつで一番北にある。首都タリンはハンザ同盟の一都市として栄えたが13世紀以降は北欧諸国やロシア帝国などの支配を受け、第一次大戦の終了後ロシア帝国からラトビア・リトアニアと共に独立。だが、第二次大戦直前のヒトラーほスターリン密約によりソビエト連邦の占領を受け、1991年までソビエト連邦の一部として併合されていた。1991年のソ連崩壊に伴って再独立した。その様な歴史の概略は知っているが、どんな国であるかは知らなかった。現在はITを行政に活用する「電子政府」「電子国家」として有名である。
副題に「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」とついているこの本の内容紹介は短く、
首都タリンから、古都タルトゥ、オテパー郊外の森、バルト海に囲まれた島々へ―旧市街の地下通路の歴史に耳を傾け、三十万人が集い「我が祖国は我が愛」を歌った「歌の原」に佇む。電柱につくられたコウノトリの巣は重さ五百キロ。キヒヌ島八十一歳の歌姫の明るさ。森の気配に満たされ、海岸にどこまでも続く葦原の運河でカヌーに乗る。人と自然の深奥へと向かう旅。
というものであった。著者は編集者の盆子原(ボンコバラ)さんとカメラマンの紀寺紀雄氏、それに現地在住の通訳兼ガイドの宮野さんと計4人でエストニアを旅する。本来はコウノトリを見に行ったらしいがコウノトリは著者らと入れ替わりにエストニアを経って南の国に渡った。第一印象では「もう我々が失ったと思っていた中世ドイツがここに残っていた」というものらしい。
最初はタリンの観光で、次はんてんしゅつきの車を雇ってコウノトリを見に行くが先ほど書いたような事情で見られず、旅は次第に内地に向かう。3日目の目的地はエストニア南岸の都市バルヌでこの日は幽霊の出るホテルに泊まった。その後はエストニア最西端にあるエス取り得最大の島サーレーマー島、第三の島ヒーウマー島を訪れ、急ぎ足でタリンにまで戻る。その途中で海の葦をみて、エストニアの海は塩が少ないと知り、海水をなめてその味を確かめたりする。全体として、著者の思考が深く、そして良識溢れるものであることが感じ取れる紀行文であった。
(2023年8月29日読了)
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