読書日記

『認知症の新しい常識』 <旧>読書日記1437 

2023年09月13日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


緑慎也『認知症の新しい常識』新潮新書

2017年度の『高齢社会白書』によると2025年には65歳以上の日本人の5人に1人、およそ700万人が認知症を患うと予想されている。認知症は現在のところ治療薬は無く、あるのはただ認知症の進行を抑える(ことができるかもしれない)薬だけ。将来はともかく、決定的な治療法が無いこの疾病に対してなしえることは「予防」しか無いのが現状である。

本書は週刊新潮の編集部の依頼により著者がまとめた「アルツハイマー型認知症の治療薬、治療法についての最前線」のレポートを主に、連載後に著者が認知症と向き合う人々にも取材したものも合わせてある。

本書で取り扱うのは認知症の中で一番患者の割合が多いアルツハイマー型認知症だけである。他の認知症累計については第1章に少し名前が出るだけであるが内容的には充分なものがある。

内容を略述すれば
はじめに
第1章 アルツハイマー型認知症とは何か
 段取りができなくなる実行機能障害や、近い時間軸から失われていく記憶障害。
 患者数は、2025年には730万人に達すると予想されている。
第2章 原因――ここまでわかったメカニズム
 病気の原因はアミロイドβと呼ばれるタンパク質。
 この物質がある程度溜まると、様々な形の記憶障害が現れる。
第3章 創薬――見えてきた光明
 アミロイドβを減らす治療薬の開発を目指す、製薬会社の挑戦は続く。
 また、予防や事前検査などの分野でも新たな研究が実りつつある。
第4章 最新治療法――免疫から超音波まで
 新たに注目される、ミクログリアなどの免疫系物質。
 一方、アルツハイマー病を循環器疾患に見立てる新アプローチも。
第5章 生活習慣と食習慣――睡眠から体型まで
 認知症を促すのは、「一時的な徹夜」か「長期的な短時間睡眠」か?
 そのほか口腔衛生、食の傾向、運動の仕方など、ベストの選択を考える。
第6章 食材の新常識――野菜、果物、魚、カレー
 ノビレチンを多く含む柑橘類、DHAを含む青魚……。
 予防効果があるとされる食材を一挙公開!
第7章 折り合いの付け方――あなどらず、悲観せず
 「認知症は神様からの贈り物」「認知症は不幸ではない」――。
 この病を穏やかに受け入れる方法はあるのか。
おわりに

基本的には予防するしかない認知症であるが、その予防に取り組むには脳内のアミロイドβの蓄積具合を知る必要がある。ただ、個人がそれを知る方法は無い。ADNIという調査が行われているけれど一般の人に対しては被験者の募集は行われていない。

ただ、耳寄りな情報が本書に掲載されていてそれがインターネット上に解説された「J-TRC(ジェイ−トラック)」というサイトである。認知症では無い50歳から85歳で興味のある人なら誰でも無料で登録でき、PCを使って認知機能検査を受けることができる。このスコアが検査の回数を重ねるにつれて少しずつ下がる人を絞り込むことによって本格的な検査、ひいては臨床試験に繋ぐことを目的としているサイトである(検査は3ヶ月以上あかないと受けられない)。

私は早速登録した。
(2021年3月10日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR







掲載されている画像

上部へ