花かるた

天使と堕天使 

2023年08月31日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

モヤモヤと 白く立ち込めた朝靄の中を
右に左に揺れながら 動く人影が
大きな折れ枝を肩に担いで 引きずってくる

これは伯父に与えられた仕事であり この後
仕事小屋でカットし 薪としてストックするのだ

  ぼんやりと 過去への旅に出かけたときに
  幾つもの映像の中で必ず見える一つのシーン

伯父の若かりし姿は 障害こそあれど締まった筋肉が
躍動感に溢れ 力強くたくましい〜左半身だけだが・・

他人から見れば痛々しくも無様な歩行に見える様だが
産まれた時からずっと見慣れてきた姿だから 私には
それが伯父の姿で なんの違和感もない

そんな 傾いた伯父の姿を認めて
「おかえりー ご飯できてるよ」と幼い私は出迎えに走る

祖父に生き写しの しかし厳然と引き締まった父親とは
全く違う顔で 彼は屈託のない明るい笑みを私に向ける

幼女の日常は 毎朝こうして始まるのだった

伯父は 幼い時にポリオに感染し 右半身不随になった
何日も生死の境を彷徨った末に 辛くも
生きながらえたが 言語も失う障碍者になった



最近とみに この伯父の生涯を思うことが増えた
打算も駆け引きも無い 無垢に近い心根や行いが
穢れた 否 大人になった私の心には 一服の清涼剤の
ようにしみわたる

最後は医療事故のような形で 亡くなったので
私の医者不信にまた一枚 死のスペードが加わったのは
嘆くべき事だが

当時の母は 何故か責任を感じて自分を責め 入院した
伯父のベット脇に憔悴した顔で 24時間張りつき
困った家族が私にSOSをだす 誰の言う事も聞かない母を
説得して 休憩をとらせるために 私は東京から 度々
出かけて行った

強力な鎮痛剤も効かなくなり 苦しむ伯父に これが
最後と与えられた致死量の睡眠剤 眠ってそのまま逝く
はずが 目覚めてしまう生命のしぶとさ 頑張り
 
そんな時 私の夢枕に祖母が立った 
遠くから歩いてきた祖母は言う
「あれを連れて行こうと思う」と

私の強い願望が成せるわざか ともあれこうして
伯父はやっと この世の地獄から解放された
伯父を わが子より大切にした母も もう居ない

今は老いた叔母たちと お茶をくみかわしながら そんな
在りし日の逸話を語るのが 私も楽しい歳ごろになった


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以前、伯父を書いた3部作「天使と言われた男」をまとめた
ブログURLを載せておきます。拙い書き物ではありますが
ご興味のある方は お読みいただければ幸いです

https://www.navi-tomo.com/user/blog/diary_detail622765.html

ご訪問頂いた皆様には この場にてお礼申し上げます





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