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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百八十一) 

2023年07月26日 外部ブログ記事
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「婦長! 教授がとうちゃくされました」 薄暗い廊下の先から、タイミング良く声がかかった。「はい、いま行くわ。分かりました、とりあえずこれは、お預かりということで」と、手渡された封筒をポケットに入れて立ち去った。「お客さん、有名人なんですね」。うしろから運転手が声をかける。事のなりゆきに興味をもって、顛末をみとどけるまではと玄関先に車を置きっぱなしにしていた。「いや、そうじゃない。ま、金がきらいな人間はいないってことさ。 お前さんだって、金は好きだろうが。金はな、貯めこんじゃだめだ。キチンと遣うべきときに、つかってやらなきゃ」“半端じゃない額をつかませたんだ。ぶじ出産を終えたら、あらためて相応の礼もとつたえてあるし。医者も必死だろうさ。しかしま、看護婦にも良い思いをさせなきゃな。片手落ちってもんだ。なんといっても、産後は看護婦しだいだろうから。小夜子のことだ、わがままいっぱいを押しとおすだろうし。看護婦も手なずけておかなきゃな”
〔金で物事を解決する〕世間では忌みきらわれることばだけれども、武蔵にしてみれば、こんな単純な道理はないと考えている。“金で買えるものは買えばいい。金で買えなければ、汗で買えばいい。それでも買えないものは、買えないものは、奪えばいいってか? 価値の分かる者が持ってこそ、光り輝くものだ”と武蔵は考える。“価値の分かっている者から奪うことになっても、より価値の分かる者ならば良しだ。真に光り輝くことになるんだ、と己を納得させる。そしてそれは、俺以外にはありえないのだ”と、断じる武蔵だ。
 その最たるものが、小夜子なのだ。想い人がいると宣した小夜子を強引におのれの伴侶とした武蔵だが、武蔵以外の男に、小夜子を光り輝かせることなどできぬ相談だと断じる。アナスターシアの不慮の死によって、ポッカリと空いたこころのすきまに乗じた武蔵だった。よしんばアナスターシアの死がなくとも、小夜子を妻にすることを諦めるはずはなかっただろう。より価値の分かる者が、より光輝かせることができる俺がとばかりに、強引にいったであろう。小夜子にとって屈辱的な行為をとってでも、娶ったにちがいない。その小夜子の出産だ、あとつぎを生んでくれる小夜子だ。どれほどの金員をそそぎこんでも惜しくないと考えるのも無理からぬことだ。
“俺のできることは、ここまでだ。あとは、小夜子の役目だ。頼むぞ、しっかりと生んでくれよ。風体なんて、どうでもいい。とに角、丈夫な男子をうんでくれ。いや、男だろうと女だろうと、どっちでも構わん。病弱でもいい。ぶじに生んでくれ。母子ともに、ぶじでさえいてくれればいいんだ”と、神仏にもいのる思いの武蔵だった。

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