読書日記

『私の本の空白は』 読書日記220 

2023年06月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

近藤史恵『私の本の空白は』角川春樹事務所(図書館)

記憶喪失した女性が自分探しをする、と言うような概要と題名から興味を惹かれて読んだ小説。

内容紹介だと
気づいたら病院のベットに横たわっていたわたし・三笠南(みかさ みなみ)。
目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。
現実の生活環境にも夫だという人にも違和感が拭えないまま、毎日が過ぎていく。
本当のことを言っているのは誰?何のために?嘘をつかれているの?
何を信じていいのかわからない不安が続くなか、夢に現れる、
心から好きだと思える人に救われていた。

さらに別の紹介には
(前略)毎日が過ぎていく。何のために嘘をつかれているの?過去に絶望がないことだけを祈るなか、胸が痛くなるほどに好きだと思える人と出会う…。何も思い出せないのに、自分の心だけは真実だった。

と、紹介の後半が少し違っている。ともかく自分の名前すら覚えていない女性が「一体、自分はどんな人間であったのだろう?」という自分探しを始める。その過程の中で理由は判らないが直観的に「何かが違う」と感じてその感覚に従って真相を知ろうとしていく。

ただ、2020年に坪倉優介『記憶喪失になったぼくが見た世界』を読んだ私は彼女の記憶喪失の現れ方に違和感も少し感じた。いや、それは余計なことなんだけど・・坪倉氏の生活回復には母親の愛情の深さと受容性とが大きく関係している。
しかし、この小説の場合は関係者である家族は何事かを隠そうとしている点が違和感のもと(しかし、謎が無ければミステリーは成り立たない)。やがて話はミステリーから恋愛小説へと移りゆく。

そうして浮かび出てくる感情と理性の対立・・最期に南は理解し、決断する。

実はこの本の叙述は2人の女性の立場から書かれている。一人目はもちろん南だが、もう一人の女性についてはあえて書かない。と言うか、これを書くとネタバラシに近いことになりそうだ。
(2023年6月13日読了)



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