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『一発屋芸人列伝』 <旧>読書日記1400 

2023年06月27日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記

山田ルイ53世『一発屋芸人列伝』新潮文庫

『ヒキコモリ漂流記』に続いて、著者の「ルネッサンス」とも言える本書を読む。「一発屋」というのは普通、何かで一発当てて一世を風靡したもののやがて飽きられて消えていった人、というニュアンスであるが著者はもう少し突っ込んで「自ら一発屋であることを自認する人」を対象としている様だ。

本書中では一発屋ではなく、0.8発屋とか0.5発屋とされている人も居るけれど・・取り上げられているのは
レイザーラモンHG(一発屋を変えた男)、コウメ太夫(”出来ない”から面白い)、テツandトモ(この違和感なんでだろう)、ジョイマン(「ここにいるよ」)、ムーディ勝山と天津・木村(バスジャック事件)、波田陽区(一発屋故郷へ帰る)、ハローケイスケ(不発の0.5発屋)、とにかく明るい安村(裸の再スタート)、キンタロー。(女一発屋)、スギちゃん(ワイルドに遅れてきた男)、髭男爵(落ちこぼれのルネッサンス)の11組。なお、かっこ内は目次に書かれている一言で、文庫化に当たってスギちゃんが加えられたそうだ。

対象の多くは2008年ぐらいに大ブレークした芸人たちである。世間の流行に疎い私でさえ半分ぐらいの名前は知っている。さすがに0.5発屋の人は知らないけど(笑)。

はじめに、で著者は書く。
本書で描かれるのはサクセスストーリーではない。
一度掴んだ栄光を手放した人間の”その後の”物語である。
とかく「消えた」、「死んだ4」と揶揄されがちな一発屋だが、筆者はそうは思わない。
取材を通して感じたのはむしろ真逆の何かである。

私は芸能界とは「売れ続けてナンボ」の世界だと理解している。一時的(10年間ぐらい?)に売れたとしてもこの世界で生きるためにはその人気あるいは仕事が20年、30年と続いて行かねばならないという世界。例外とも言えるのは7年でこの世界を去った山口百恵ぐらいであろう。

だから、一発屋というのはいつの時代にもいるだろうし、ひとときの栄光がその後の人生をどう彩るかはその人自身によるところが大きいかもしれない。それにしても、自らも一発屋であると自認する著者の仲間を見る目は暖かく柔らかい。

尾崎世界観(誰だ、この人?と検索した・・ははあ、日本のミュージシャン、小説家ということか)氏は解説で「はたして君たちは、我々に向ける、その”根拠、実績のない上から目線”を自分自身の人生に向ける勇気があるのか?」と書く。これは解説者が忘れられない著者の言葉だそうだ。

そう言えばamazonの書評で★1つとか2つとかの低評価の中に「漢字、言葉が難しすぎ。」とか「一般書籍では日常使われない漢字を多用しているので、読みづらい」と言う評価は一体何なのだろう。それこそ自分の教養の乏しさを棚にあげての上から目線ではなかろうか。
(2020年12月9日読了)



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