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読書日記
『江戸は廻灯籠』 <旧>読書日記1397
2023年06月21日
テーマ:<旧>読書日記
佐江衆一『江戸は廻灯籠』講談社
20年以上前の1997年に購入してそのままだった本。著者がつい先日の10月29日に亡くなったのを知ってあらためて書棚から取り出して読んだ。
連作短篇集で「縁(エニシ)の五十両」「落花一輪の剣」「いぶし銀の雪」「いぬふぐり」「千住大橋五月闇」「風の鬼灯(ホオズキ)」「老木(オイギ)の花」の7篇が収められている。それぞれの短編の脇役であったり、点景であったりした人物が次の作品の主人公になるという趣向である。
「縁の五十両」は倅の為に普請場で50両を出来心で盗んだ屋根職人の留八が、その金を倅に渡す前にいましも川に飛び込もうとした見ず知らずの母子連れにやってしまう。実はその母子こそ倅が助けようとしていた人だった・・一方盗まれた側の親方は職人の仕業だと判っていた、という話。その職人が屋根の上から親子連れが剣の稽古をしているのを見ていた。「落花一輪の剣」はその親の剣客竹村半之丞の話で、相抜けを極意とする針ヶ谷夕雲を流祖とする無住心剣流を遣う。あるとき藩侯の前で親友と試合をし、その後、居酒屋で二人して飲む内に親友と真剣で立ち会うことになり、見事相抜けの技を振るうという話。「いぶし銀の雪」はその居酒屋に勤めるおきぬが病気の母を捨てて客の一人の銀細工師と駆け落ちしそうになるが近所に火事がおこり、決行の日に思いとどまるという話。
「いぬふぐり」は火事を起こしそれに野次馬が集まる隙に強盗に入るという方法で稼ぐ泥棒集団の連絡役伝蔵が岡っ引きによって密偵とされ、これで解放されるという時に密偵であることがばれて無残に殺されるという話。「千住大橋五月闇」はその密偵を遣っていた岡っ引き佐吉による復讐譚であるが、同時に岡っ引きは密偵の一人娘おうめを引き取って養女にする。「風の鬼灯」は養女となったおうめと友人の娘おひさは共に針仕事を習っている。おひさはは風鈴売りの男に心惹かれているがそれを知った父に叱られる。叱られたおひさは風鈴売りの所を尋ねるが既に旅立っていて、迎えに来た父の使用人と船に乗って帰る。最後の「老木の花」はその船に同船していた隠居の幸兵衛(初めの普請場の依頼主)が妾であった女の生き別れになった娘を探しその対面を取り持つ話。
最近だと『木曜日はココアを』などで同じ趣向が使われているが、これは何しろ20年以上も前の本だから確かなことは言えないがこのような趣向の嚆矢かもしれない。
(2020年11月30日読了)
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