読書日記

『弓組寄騎仁義』 <旧>読書日記1394 

2023年06月15日 ナビトモブログ記事
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井原忠政『弓組寄騎仁義』双葉文庫

この足軽から始まって出世していくシリーズは今年の2月から、4月、6月と立て続けに3冊が出て、半年ぶりの第4巻である。さて、第3巻の末尾で徒士武者から騎馬武者に出世し、名前も植田茂兵衛と改めた主人公。前巻で先手弓組を率いることになった松平善四郎の寄騎となったが、善四郎も茂兵衛も乗馬を苦手としている(茂兵衛は前巻まで徒武者だったのだから当然である)。

三方ヶ原の戦いのあと、武田軍が後退し、わずかの平穏の間、2人は馬に慣れるために乗馬の鍛錬をしていたが、その最中に善四郎の口利きで茂兵衛に縁談が舞い込んでくる。それも善四郎の姉の寿美を娶らぬかという話である。もっとも、寿美は今までに2度結婚し、そのいずれも戦死しているため「殺しても死なない様な男が良い」と泣くそうである。見合いもどきの後、結局は寿美を娶ることになった茂兵衛である。

というような、のどかな話のあと、武田信玄の後を継いだ勝頼があらためて軍を率いて徳川領に攻め入り、茂兵衛たちも防戦におおわらわとなる。武田勢は長篠城を取り囲み、茂兵衛は城を抜け出してきた鳥居強右衛門と出会い、介助して家康に会わせることになる。戦いそのまま「長篠の闘い」に及ぶのであるがそれが本巻の中心であり、ハイライトとなって、戦後、茂兵衛は千貫に加増されて、徳川家は事実上信長の臣下となり対外的にはひと息つくことになる。

以下は余談である。発売当初から、3巻目までが予告されていて、一旦、休止が入ったものの続編が出版されたことで史実を追うとこの7年後、信長は武田家を滅亡させ、同年のうちに本能寺で死ぬ。信長の死後徳川家は北条家と対峙し、台頭した豊臣秀吉とは小牧長久手の戦いで対峙することになるが和睦。その後、秀吉の北条攻めに至り、関東への領地替え、さらには秀吉没後の関ヶ原の戦いから家康が天下を掴むまでの歴史があるが、このシリーズはどの辺りが茂兵衛のゴールとなるのであろうか。
(2020年11月24日読了)



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