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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百五十八) 

2023年05月31日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「まあね。武蔵も、浮気ぐせがなくなれば、ほんとに良い夫なんだけど。でも、武蔵が浮気をやめたら、武蔵じゃなくなる気もするしね。面白いのよ、武蔵は。浮気したのかどうか、すぐに分かっちゃうの。笑っちゃうわ、ほんとに。自分からね、あたしは何も言わないのに、白状してるようなものなの。武蔵には内緒よ。くくく、武蔵ったら、かならず言うの。『こんどの休みに、買い物に行かないか? 欲しいものはないか? 取り引きがな、うまく行ったんだ』なーんて。ううーん、間違いないわ。だからね、こう考えることにしたの。武蔵の浮気は自分へのごほうびなんだ、って。ひとつ取り引きに成功したら、誰も褒めてくれないから、自分にごほうびを上げてるんだって。でも自分だけだと気がとがめるから、あたしにもごほうびをくれるんだって。おかしいでしょ?ほんとに」
小夜子は笑った。確かに声を出して、笑った。しかしその笑顔からは、笑みは感じられない。ひきつった笑顔が、そこにあった。竹田には、少なくともそう見えた。“おさびしいんだ、小夜子奥さまは。だから社長の出張時には、こうして外出なさるんだ。お酒を飲んでの憂さばらしなどおできにならないから、大勢の人の輪のなかにはいって、ご自分を開放されているんだ” 竹田のなかに、はじめて武蔵にたいする怒り――というほどではないが、“あんなに大切に思っていられるのに……”と、疑念の思いがわいた。そして自分を置きかえてみると、絶対に哀しい思いはさせないのにと断言した。
「あたしね、お金をどれだけ遣わせたかが、女の勲章だと思ってた。どれだけ着飾らさせてくれるかで、あたしに対する愛情の度合いを計ってきたような気がする。そういう意味では、武蔵は十分よ。甲を付けてあげられるわね。でも、女は欲が深いものなの。そけだけじゃ足りなくなっちゃった。こころのね、渇きがね・・。そう、こころの渇きを潤すことも大事なのよ。勝子さん、残念だったわ」 ため息まじりの小夜子のことばに嘘はない。それはかつての己を諫めることばであるとともに、これからの己にたいするいましめの気持ちでもあった。
「はあ」「いまのあなたには、分からないかもね」「いえ、分かります」「ふふふ、そう思ってるだけよ。竹田、彼女、いる?」「と、とんでもない。そんな方は、いません」 唐突な小夜子のことばに、思わず語気をつよめて否定した。「でしょ? だからよ。ビーフステーキが来たわ。さ、食べましょ」

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