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三度目で最後の大陸〜心が温まる物語 

2023年04月22日 ナビトモブログ記事
テーマ:本を読む

作家のお気に入りの本に短編集「停電の夜に」を見つけた。
あ!私と同じだと本棚から取り出した。
中でも「三度目で最後の大陸」が大好き(*´∀`*)
淡々と紡ぎ出す日常に愛が溢れて涙も溢れる。

インド出身の彼はイギリスに行き経済学を学んでいる。
ある日、アメリカから仕事の口を貰ったが
まずインドで結婚式を挙げからアメリカへ向かった。

36歳の彼には、家族の中でインドで嫁が決まっていたのだ。見ず知らずの女が大切な妻に変わっていく時、
そこには、一人の高齢の女性が関わっていく。

その名は、ミセス・クロフト。
彼がアメリカで下宿した時の家主で1人で住んでいた。
ほとんど男顔になるほど目もくぼみ、ただ、凄みだけがある高齢の女性だった。

彼は毎晩、勤務先から帰るとミセス・クロフトと、
僅か10分ほどだったが、同じ会話を繰り返した。
それは下宿していた6週間ずっと。
長く生きてきた彼女に、その姿に敬意を払うように、
一言一句毎日同じ言葉、彼女の求める言葉を発する。
儀式にも似ていて優しく寄り添った。

インドから嫁になった女がやってきて二人で暮らすことになった。
でも何ら感情も湧かず、慣れない関係が続いて、
はて、どうしたものか。。
ミセス・クロフトの家に二人で行こう♪

「完璧。いい人を見つけたね!」 
ミセス・クロフトのその言葉に彼は思わず笑った。
その時、確かに嫁のマーラーと初めて見つめ合い、
笑顔を交わす。その瞬間から、二人の関係は変わった。

そして彼がミセス・クロフトの訃報を知って
口がきけないほどのショックを受けた時も
優しくマーラーが慰めてくれた。
もう、嫁であるマーラー無しの人生など考えられない。

晩年の彼にとって、ミセス・クロフトと毎日会話した6週間。
その思い出は永遠だ。わざわざ、家のあった通りを
車で走り、大学生の息子に言って聞かせる。

「ここに私の最初のアメリカの家があったのだ。
そこで103歳の人と暮らしたのだ!」

最後に彼は自分の心と対話して話は終わる。
3つの大陸(インド、イギリス、アメリカ)で生きてきた。
普通の事かもしれない。けれど全部やってきたんだ。

長編を読んだような感動と温かい心に包まれる。
それはきっと彼とマーラーの人生と103歳と言う齢を
重ねたミセス・クロフトの人生の輝きのようで。



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