読書日記

『よろずを引くもの』 読書日記181 

2023年04月10日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

西條奈加『よろずを引くもの』東京創元社(図書館)

この本で、衝撃的だったのは本に添えられたお蔦さんのイラストであった。何というか、すごく尖った顔をしている。え、こんな人だった?もう少し柔和な顔をしているはずだと思う。確かにお蔦さんは話す言葉は厳しいかもしれないけれど心根は優しく、酸いも甘いも噛み分ける人のはず。もしかすると、このイラストレーターは言葉というもののニュアンスが判らず、文字通りの意味にしか受け取れない人では無いだろうかと思えるぐらいだ。まあ、第一、私は文芸書にイラストは不要だと思っている。

さて、内容紹介では

頼れるお蔦さんの元には、
みんなの相談事が集まってくる・・・・・・
もと芸者のおばあちゃんと孫の望が、
秋の神楽坂で起こる事件を見事に解決!
直木賞作家・西條奈加が贈る
大人気シリーズ最新短編集!

多発する万引きに町内会全体で警戒していた矢先、犯人らしき人物をつかまえようとした菓子舗の主人が逃げる犯人に突き飛ばされて怪我をしてしまった! 正義感に駆られる望と洋平は、犯人の似顔絵を描こうと思い立つが……商店街を巻き込んだ出来事を描いた「よろずを引くもの」を始め、秋の神楽坂を騒がす事件の数々を収録。粋と人情、そして美味しい手料理が味わえる大好評シリーズ、待望の最新作!

ということで「よろずを引くもの」「ガッタメラータの腕」「いもくり銀杏」「山椒母さん」「孤高の猫」「金の兎」「幸せの形」の7篇を収めている。

「よろずを引くもの」では万引などの窃盗行為がやめられない心の病「クレプトマニア(窃盗症)」のことが出てくる。
「ガッタメラータの腕」は望の学校の美術部で起こった事件。なお、ガッタメラータ(仇名:おあいそ猫の意)はルネサンス期イタリアの有名な傭兵隊長である。
「いもくり銀杏」は香月と芽依という兄弟が母親の不在に耐える話。お蔦さんは帰って来た母親を叱り飛ばす。
「山椒母さん」はお蔦さんと同期の勝野姉さんの二人がお母さんと呼ぶ踊りの師匠が登場。行方不明の弟子を探す話。
「孤高の猫」は町猫のハイドンが行方不明になり、訳ありの親子の世話になるという話。
「金の兎」はお蔦さんが亡くなった浜松の昔なじみの男優の家を訪ねるはなしで、尋ねられた家の娘の視点で語られる。
「幸せの形」はごく短いもので望が友人の楓を指導しながらケーキを作る話。

最後の話を除いていずれも謎が提示されて解決されるがその背景の問題には手を出せず、そこに余韻が漂う。もう一つ、望の作る料理が興味のある人には自分でも作って食べてみたくなるかも知れない。私は残念ながらそうしたグルメでは無いので読み飛ばすだけだったけれど。
(2023年3月26日読了)



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