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敏洋’s 昭和の恋物語り

歴史異聞 鼠小僧次郎吉 〜猿と猿回し〜 (八)再見参! 

2023年02月28日 外部ブログ記事
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 屋敷からの帰り道、次郎吉は今夜の収穫の大きさに胸が高ぶっていた。なんと二日後の夜、茶会の為に主人が外出するというのである。本家筋にあたるため、お泊まりになるはずだとも。命の洗濯をするから、お前も来いというのである。次郎吉は、小躍りしたい気持ちである。主人の居ない大名屋敷ほど無防備な屋敷はない。みな、酒に溺れて寝てしまうのが常であった。次郎吉は、その日以外にないと決断した。
 その夜、薄曇りの天候で月明かりも弱かった。忍び込みには絶好である。屋敷内は、シンと静まり返り、木の葉の落ちる音さえ聞こえそうである。みな、鬼の居ぬ間にとばかりにどんちゃん騒ぎに興じた。そして、疲れ果てて眠り込んでしまった。 次郎吉は音を立てぬよう、抜き足・差し足と、長局奥向に近づいた。半開きの障子から中をうかがうと、飲みつぶれた家臣たちが寝転がっている。次郎吉の目指す長局奥向には、人影はなかった。ひとつの局に腰元達が三・四人は居るはずである。
 灯りのついた局に耳を当て、中の様子をうかがってみた。物音ひとつしない、微かな寝息が聞こえるだけだ。障子の敷居に油を流し、音を立てずに開けた。建具職人時代に覚えたことだ。灯りが庭に洩れる。次郎吉は、すぐさま辺りを見回し、物音を聞くために耳をそばだてた。「ふっ。みんな、寝入っているな」。そっと障子を閉じた。
 女だてらに酔いつぶれた腰元五人が、深眠していた。乱れた裾から、白いおみ足がのぞいている。帯を解いての伊達締め姿の腰元もいた。次郎吉は、その醜態を一べつすると、ふん、と鼻を鳴らした。女好きの次郎吉ではあるが、あの一件以来、腰元に対しては憎悪の念以外は持たなかった。横たわる腰元たちを避けながら、棚の上の手文庫を開け、中の小判を手にした。どうやら、腰元らの持ち金らしい。
 それにしても、小判だけでも十枚はある。他に、二分判金・一分判金・一朱銀と、数知れず和紙に包んである。(一分判金=一両の四分の一;二分判金=一両の二分の一;一朱銀=一両の十六分の一)もちろん、小判は草文小判=文政二年に改鋳されたもので、以前の真文小判より悪質のものである=当時の幕府が急激に貨幣の質を下げ、その差でもって財政悪化を防いでいたのである。だが、一枚だけ、佐渡小判金=約百年前に鋳造された最高級の小判で、その当時には出回っていないもの=があった。おそらくは『お守り』のつもりで、親が持たせたのであろう。次郎吉は、そのズシリとくる重さにほくそ笑むと、大事に懐にしまい込んだ。

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