読書日記

『布石』 <旧>読書日記1340 

2023年02月21日 ナビトモブログ記事
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上田秀人『布石』講談社文庫

「百万石の留守居役」シリーズの15冊目。なんと言うか、話が続いているので、一巻のみの話の成り行きでは訳が判らなくなって来るのが本シリーズである。

前巻のいきさつは加賀藩邸の不祥事を咎める評定所に臨む為、江戸に向かった百万石の筆頭宿老・本多政長。神君家康の懐刀と言われた本多正信の血筋の登場に評定所の面々は圧倒された。陪臣の矜持を保ちつつ、政長は将軍綱吉との謁見を乗り切った。将軍と政長との間で交わされた話の内容が漏れてこないため、それを探る各藩の留守居役との交渉をめぐり、数馬の周囲は騒然となる。なおも江戸に留まる政長に随伴する数馬は、本多家と吉原の累代からの関わりに驚嘆する。

そして、本巻の裏表紙の惹句には以下の言葉が並ぶ。「加賀藩前田家当主に目通りを望む越前松平家の家老の狙いは、藩主・綱昌が認めた“書状”を取り戻すことだった。対する加賀の宿老・本多政長の嫡男、主殿が講じた策とは。江戸にいる政長と数馬は、越前松平家の留守居役との悶着に始末をつけるべく動く。いわくつきの書状の行方が各藩の命運を握る。」

そして、この越前松平家の一件は本田政長によって将軍綱吉に伝えられる。というところで話は一端停止し、巻末において、紀州藩の留守居役が城中での本田政長に面会したいと望み、政長が会った所、トンデモ無い望みを持ち出し・・以下、次巻を待つという次第。

初期の上田秀人は細い糸の様な武士の論理を繋ぎ、話を組み立てていったが久しぶりにその武士としての論理立てを綱吉と政長の対談に使い、政長は好んでその論理の絶壁の上に立つのである。



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