読書日記

『躍る六悪人』 読書日記157 

2023年02月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

竹内清人『躍る六悪人』ポプラ社(図書館)

著者は「神奈川県出身。91年日本映画学校を卒業後、映画宣伝業務に携わる。2005年、映画「戦国自衛隊1549」で脚本家デビュー。」とタレントデータベバンクの中の映画監督・出演者情報にある。この本は著者の初のオリジナル小説(*)であるとのこと。

amazonの内容紹介によれば
時は、天保九年。大飢饉と悪政により、江戸には窮民が溢れかえっていた。強請りたかりを生業にする茶坊主・河内山宗俊は、時の老中・水野忠邦に捕らえられ、ある謀略を持ちかけられる。幕府の金で私腹を肥やす不届き者から、金を根こそぎ奪えという。狙いは、大御所・徳川家斉の側近中の側近、中野碩翁の隠し財産十万両に定まった。しかし贅を尽くした中野屋敷の金蔵には、危険なからくりが何重にも仕掛けられている。無謀も無謀の大博奕に、河内山は選りすぐりの悪党たちを呼び集めた。予測不能の騙し合いの果てに浮かび上がる、真の目論見とは―?新たなダーク・ヒーロー堂々誕生!息苦しい世に風穴穿つ、比類なきエンターテインメント!

ということであり、巻末には参考文献が計42冊あげられてもいるが・・その中に『天保六花撰』があった。『天保六花撰』とはもともとは講談であってのちに河竹黙阿弥が歌舞伎化した演目でもあり、以下の六人が登場している。
・河内山宗俊(こうちやま そうしゅん)御数寄屋坊主。強請たかりを生業にする。
・片岡直次郎(かたおか なおじろう)御家人くずれ。河内山の弟分でさまざまな悪事に手を染める。
・金子市之丞(かねこ いちのじょう)剣客。
・森田屋清蔵(もりたや せいぞう)盗賊の首領。海産物問屋を表向きの商売にしている。
・暗闇の丑松(くらやみの うしまつ)博徒。直侍(片岡直二郎の異名)の弟分だが、後に裏切る。
・三千歳(みちとせ)直侍買いなじみの娼妓。直侍の遺骸を引き取り回向院に葬る。
(河内山宗俊、片岡直二郎、三千歳の3人は実在のモデルがいるが、他の人物は不明)

で、この『躍る六悪人』は結局のところ、『天保六花撰』を下敷きにして森田屋清蔵を敵役として違う一味の首魁にし、代わりに鉄砲鍛冶兼絡繰り師の国友突貫斎を河内山宗俊の一味のひとりにした上で、黒幕としてのちの老中水野忠邦とその部下鳥居耀蔵を配し、狙われる悪党として将軍徳川家斉の側近中野碩翁(実在か?)とした三つ巴、四つ巴の乱戦を描いたもの。映画的と言うか、裏切りやどんでん返しの連続で楽しませてくれるが、逆に言うと映画にすれば見せ場が多くて面白かろうというただそれだけの話である。

(*)著者には他に『風流時圭男』(2007年)『かぞくの南京錠』(2021年)などの小説があるようだが、この両作は読んでみても良いかもしれない。ただ2冊のうちの前者は『躍る六悪人』(2017年)よりも10年前に出版されているのが疑問である。
(2023年2月10日読了)



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