読書日記

『グランドシャトー』 読書日記152 

2023年02月08日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

高殿円『グランドシャトー』文藝春秋(図書館)

風俗営業には、バー、キャバレー、クラブ、パブ、スナック、ラウンジ、キャバクラなど様々な業態(*)がある。と言っても基本的に酒を飲まない私にはそれぞれの細かい違いは判らない。さらに言うと、風俗営業店と上に書いたものとは異なる性風俗店とは法律によってきれいに分けられている

そんな中で本作は大坂の「グランドシャトー」というキャバレーを舞台にした作品。どうやら大坂人には実在の店の存在によって店名の中の「ド」が目に入らないらしいし、CMソングが耳から離れないとか(笑)。

内容紹介にると
昭和38年、大阪京橋のキャバレー「グランドシャトー」に流れ着いた家出少女ルーは、ナンバーワンの真珠の家に転がり込む。下町の長屋に住み、ささやかな日常を大切にして暮らす真珠を家族のように慕いながらも、彼女に秘密の多いことが気になるルー。そんな中、人を楽しませる才によって店の人気者となったルーのアイデアが苦境のグランドシャトーに人を呼ぶが―。導かれるように出会ったルーと真珠。昭和から平成へ、30年の物語。

プロローグは72歳になっても現役のキャバ嬢として働くルーはオーナーの廃業方針に反対して店の舞台で踊るシーン。

主人公はルーだが、副主人公と言うか物語の中心にいるのは真珠で、ルーの目から見た真珠は謎の人。ずっとグランドシャトーのナンバーワンを続けているが、自分の人生をまったくと言ってようほど語らず、稼ぎはあるはずなのになぜか貧乏暮らしを続けている。ナンバーツーにまでのし上がったルーと真珠は正反対の性格にも見えるが、共に寝起きして、その質素な生活を愛し、共に楽しんでいる。それはあたかも年の離れた姉妹、見方によっては親娘の関係にも見える。けれども、二人は互いの本名も知らないのである。

一時的にグランドシャトーを出て東京で活躍する様になるルーの不在の間に世の中は変化し、キャバレーという業態はすたれていくが真珠はずっとグランドシャトーにいるが、その客筋が良いためナンバーワンの地位を保ち続ける。実の母親(ルーは家族関係に悩んでいる)の死を契機としてルーは東京での芸能生活をきっぱり止め、グランドシャトーに復帰して、再びの繁栄を夢見て奮闘する。

物語の最終盤で真珠は病み、ルーの看取りの下で静かに息を引き取るが、全国紙にその死が報じられキャバレー主宰の葬儀には客筋ではない女性たちが多く集まって真珠の金の使い道が明らかになる。

作者のインタビューがネットにある。https://books.bunshun.jp/articles/-/5136

(*)バーは酒の味を楽しむことを目的とした、最低限の接客をしているだけの酒場、飲酒店であり、業種分類では宿泊業、飲食サービス店に分類されている(すなわち普通は飲食店の分類)。しかし、深夜も営業するなど営業形態によっては、風俗営業法に関わる場合もある。
(2023年2月02日読了)



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