読書日記

『直観を磨く』 <旧>読書日記1331 

2023年02月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記

田坂広志『直観を磨く』講談社現代新書

「深く考える七つの技法」という副題のついた1冊であるが、著者が何をもって「深く考える」と言うのか、あるいはまた「直観」という言葉をどのように考えているのか、を知りたいと思って読んで見た本である。

冒頭に近い部分で著者は言う。考えるというと論理的に考えるということをイメージする人が多いが、実は「論理的に考える」ということは「考える」という技法においてはじつは初級課程に他ならない」と。続けて、論理的に考えるを超えた思考法は「直観思考」とでも言うべきものである、と書く。で、そこに至るためには様々な思考法を身につける必要があり、「深く考えるための七つの技法」があると言うのである。

著者は自称「深く考えるプロフェッショナル」であり、その経歴を簡単に書けば、工学部大学院で博士号をえるために深く考えてきたし、その後、民間企業では企画プロフェッショナルとして、さらに米国と日本でのシンクタンクでは深く考えることが仕事の日々であり、また90冊余りの著書を書いてきたがそのためにも深く考えるのが仕事の毎日だという。実はこの時点で(まだ20ページほどしか読んでいないが)がっかりした。

著者の言う思考法は結局は課題解決のための思考法ではないか、という疑いが生じたのである。途中で出てくる量子力学での「ゼロ・ポイント・フィールド」仮説、すなわちこの宇宙の中に無数に存在する「量子真空」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる場がありこの場にこの宇宙のすべての情報が記録されているという仮説は正しいかも知れないけれど、その場と私たちの思考が結びつくことによって解答が直観できると言う話は私にはオカルトの匂いがした。ましてや、この場が神や仏なのではないかと言うに至っては眉唾どころの話では無い。

ちょっとつついてみると、「ゼロ・ポイント・フィールド」ではその場にある情報は過去のものだけなのか、未来のものは含まれないのか、時間の方向性はあるのかないのか、あるいはエントロピーが極大の場であったならどうなのか、などと想像できるのであるが・・

結局、読み通してみたけれど「直観」とは何かについては「ゼロ・ポイント・フィールド」以外に書いて無く、ほぼ無定義概念であった。
(2020年5月27日読了)



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