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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百八十九) 

2022年11月24日 外部ブログ記事
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 アーシアのにこやかに微笑んでくれる顔が浮かぶと同時に、大粒の涙がどっと溢れ出た。アーシアを思い浮かべても、このところ涙までは流さなかった小夜子だった。ところが、いま、アーシアの死と武蔵との出会いを関連付けてしまった。“関係ないわ、関係ない。あのとき一緒に行かなかったのは、ごく自然なことよ”と否定するのだが、武蔵と会わなければ……と考える小夜子だった。「大丈夫でございますか、お医者さまをお呼びしましょうか? 長旅でおつかれでしょう」 おろおろと小夜子に問い掛けた。気丈な小夜子しか知らぬ千勢にしてみれば、いまの小夜子は尋常ではなかった。医者を呼んだからといって、どうにもできぬことは分かっていた。分かってはいたが、何かをしなければと焦るだけの千勢だった。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょ? もう大丈夫よ。アーシアのことを思い出すと、時々泣いてしまうの。でももう大丈夫だから。専務のことね。善しにつけ悪しきにつけ、専務と出会ったのが、あたしの人生の分岐点ね。だけどとに角、嫌いなの」「分かりました、小夜子奥さま。もう口にいたしません。どうぞご安心ください。それより、みなさんはいかがだったのですか?」と言いつつも、千勢の中では竹田のことを聞きたいのだ。会社での竹田のことを知りたいのだ。「竹田? そうねえ、竹田はねえ。竹田は、暗いわね」ぞ んざいな口ぶりで、口にするのもはばかられるとばかりに、一刀両断に切り捨てた。なぜかしら、千勢に竹田のことを話したくない小夜子だった。
「それより、服部よ。もうだれ彼かまわず声を掛けまくってたわ。何かといっちゃ体に触って、大騒ぎ。女子社員が逃げ回っていたわよ。でも人気者ね、案外。服部の背中を叩いていたもの、みんな。でもう、会社中を走り回って。すぐには帰ってこない社員なんかは、案外良い感じかもね」「はあ、はあ。」と気乗りしない様子で聞き入る千勢であり、竹田の話が聞けなければまるで興味のない千勢だ。しかし小夜子はなおも話しつづけた。「それにくっついてはしゃぐのが、山田ね。山田も一人だと静かなんだけど、服部に便乗するみたい。でも、山田にはお目当てがいるみたい。その子の顔色を窺いつつというのが、手に取るように分かったわ。名前が分からないけど、まあ美人ね。ちょっとつんとした感じで、スレンダーガールね。スレンダーは、痩せてるってことよ。そうね、モデルさんタイプかな? そう言えば、竹田もちらりちらりと盗み見してたような……」 途端に千勢の体がピク付いた。顔も少し引きつっている。「そ、そうなんですか。美人の社員なんですね。竹田さん、痩せてる女性がお好きなんですね。」無理に出す高い声は、明らかに普段の千勢の声ではなかった。

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