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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百八十六) 

2022年11月17日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「でもよくじつのだんなさま、ほんとにうれしそうでした。『観音さまに会ってきたぞ!』って、そりゃもう大はしゃぎでした。ほんとに、あんなにうれしそうなだんなさまを見たのは、はじめてです。千勢、すこしやきもちを焼いちゃいました」 目をクルクルと回しながら、我が事のように喜ぶ千勢。思わず抱きしめたくなる衝動に駆られる小夜子だった。「そう、そうなの。そんなに喜んでた? でもね、あたしね、はじめのころって、突賢貧だったのよね。ぞんざいな口の利き方をしてたかもしれないわ。とにかく加藤専務がつれてきた男性でしょ? いい感情は持てなかったのよね」
「そんな、小夜子おくさま。あんなに立派なだんなさまはいらっしゃいませんよ」 口を尖らせて抗議する千勢。苦笑いをしながら、千勢を制する小夜子だ。「そうね、今はそう思うわ。たっくさんのお金を遣わせてもね、何のお返しもなし! それで女給さんたちに睨まれてねえ。でも、武蔵が一喝してくれたの。『俺の小夜子をいじめる奴は許さん!』って。嬉しかったわ、ほんとは。でもそれでも、迷惑そうな顔を見せてたの。それでも武蔵は、お食事やらお洋服、ハンドバックまで買ってくれてね。さすがに、お店の梅子お姉さんに叱られちゃった。その時でも、生意気にあたしったら口答えなんかしちゃって」
「あぁ、あの梅子お姉さんですか? 二、三度、よいつぶれただんなさまを送ってこられたことがありました。でも、いつも玄関先でお帰りになられて。キチンとした方なんですね。だんなさまも、『あいつは、じょけつだ!』。『場が与えられたら、一端の経営者だぞ』。ほめてらっしゃいました。『男だったら、俺の片腕にしたいほどだ』とも」「やっぱり? そうよね、素敵な女性ですものね。なんかこう、日本のお母さんって感じがしない? でんと肝が座ってて、多少のことには動じないって。ああいう女性がね、新しい女に目覚めたら、きっとすごいことになると思うんだけどなあ。『あたしゃ、そんな難しいことは分かんないよ』って笑い飛ばされちゃったけど」
 千勢には、小夜子の言う新しい女がどんな女性像を指しているのか、皆目見当がつかない。ただ口酸っぱく言いつづける小夜子を見ていると、こういう女性のことなんだと納得してしまう。自由奔放に思いのままに行動し、それを周囲に認めさせてしまう女性。それが、小夜子の言う新しい女なのだと思ってしまう。もっとも、小夜子にしても新しい女というものを完全に理解しているとは限らない。平塚らいてふ発刊の文芸誌〔青鞜〕を一読し、それですべてを理解したと思い込んでいた。「そうそう、一度だけね、ほっぺにチュッ! ってね、してあげたの。そのときの武蔵の嬉しそうな顔ったらなかったわ。でも、焦らしてるつもりはなかったのよ。そのころのあたしには決まった人がいて、そのことは武蔵も知っていたし。だから、足長おじさん位に考えてたの。それに、アーシアと一緒に世界を旅するとも決めてたし」

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