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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百八十二) 

2022年11月08日 外部ブログ記事
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「だんなさま、おどろかれたでしょ。でも、分かる気がします。包丁を持って、いざ!という時に声を掛けられたのでは」「『なに考えてるんだ、お前は!』って、怒られちゃった。千勢は、怒鳴られたことはある?」 間髪いれずに、千勢が答えた。「とんでもございません。声をあらげられることなど、いちども。だまってあたしの前にさしだされて、『食べてごらん』と、ひと言です。辛かったり甘すぎたり、ありました。でも、『お前の一生懸命さは知っている。次は、もう少しおいしくしてくれ』と。『手際の悪さでお待たせしちゃだめだ、なんて考えるな。なんでもそうだが、手間暇をかけてこそ、実がなるというものだ』とも言われました」
「そう、千勢には優しいのね」「いえいえ、千勢はどんくさいので。」「武蔵は、千勢が可愛くてしかたないのね」「こんな、おか目のあたしがですか? キャハハハ、そんな」 底なしに明るい千勢が、時として荒みがちだった武蔵の心を和ませていた。そして今は、小夜子の奔放さが武蔵には嬉しい。
「ほんとにおやさしいだんなさまです。会社ではこわい社長だとお聞きしましたけれど、決してそんなことはありません。きっといっしょうけんめいにおやりにならないから、強くおしかりなんだと思います。小夜子奥さまもそうお思いでしょう?」 嬉々として話していた千勢だったが、次第に目がうるみ始めて、とうとう最後には涙声になってしまった。「もうしわけありません、あたしったら。どうしたんでしょ、悲しくなんかないのに。ちがうんですよ、うれしいんです。また呼んでいただけるなんて、思ってもいませんでした。だんなさまにお聞きしました。お前のことをきらったんじゃないぞって。あたしてっきり小夜子奥さまにきらわれたんだって思って。悲しくて悲しくて。しばらくの間、実家にもどっていたんです」
 小夜子の差し出すハンカチで、笑みを浮かべながら涙を拭いた。「でも、遊んでばかりもいられないので、新しいお屋敷でお世話になっていたんです。そのお屋敷でもかわいがってはもらえたのですが、やっぱりだんなさまと小夜子奥さまが忘れられずに……。そんな時に実家から手紙がとどいたんです。だんなさまからお声がかかったけれどどうする? と」「いつなの、それって。あたし、全然聞いてないわ」? 小夜子を思っての武蔵なのだが、ひと言の相談もなかったことが腹立たしくも感じる小夜子だった。“家事のことは、あたしに決めさせてくれなきゃ”。しかし“武蔵らしいわね。あたしのこととなると、素早いんだから”と、満更でもない。

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