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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百五十五) 

2022年07月07日 外部ブログ記事
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? いそいそと荷物を詰めている小夜子の後姿を、茂作が恨めしげに見ている。「お父さん、夕べは飲みすぎてない? お銚子は一本までにしてね。夕食をね、お茂さんにお願いしたから。もし本家でご馳走になる時は、早く連絡してあげてよ。それから、いくら本家からの頼みだからって、無理しちゃだめよ。あまり熱を入れるのはやめてね。村長さんを支持している人たちとのいさかいなんかに、巻き込まれないようにしてよ。本当を言うと、武蔵は良く思ってないの。身内に政治家がいるとね、大変なんだって。手が後ろに回るようなことに巻き込まれないかって、心配してたわ。あたしも、なんだか嫌な予感がするし。もう本家の言いなりにはならないでね」
 身支度を終えた小夜子が、囲炉裏端で背を丸けてお茶をすする茂作のそばで、あれこれと話しかける。。「ああ、分かってる。わしもそう思い始めたところじゃ。繁蔵兄さに、そう言おうと思っとる。頼みに回った家々で話し込むと、まあ文句のでることでること。いまの村長だって、それなりにがんばっとるのにじゃ。自分の思うた通りにいかんからというて、あんな言い草はなかろうと思うわ。それよりの、小夜子や。わしはお前のことが心配での。あの大正男の大風呂敷が心配での。大変な額になるんじゃが、大丈夫なんか? 今回かぎりじゃのうて、毎年のことぞ? そんなに金もうけができるのか?わしがいうのもなんじゃが。痛い目におうとるわしが、いや、わしじゃから、のお」
 不安げな表情を見せる茂作に、きっぱりと小夜子が言い切った。「心配ないって。商売の方はぜんぜん心配することないの。あんな顔して、結構こわもてなんだから。お父さんのこともね、『決して不自由はさせん』って約束してくれたし。あたしだって、いままでと同じ、ううん。いままで以上の贅沢をさせてやるって言ってたから。タケゾーはね、口にしたことはきっと守るから」 ニコニコ顔で答える小夜子、そして苦虫をつぶした顔で受ける茂作。が、その中に少しばかりの安堵の色が浮かんでいる。
「ごめんください、小夜子お嬢さまはお見えですか?」「あら、幸恵さん」 小夜子が戸口に顔を出すと、幸恵がぺこりと頭を下げた。「小夜子さま。明日、お帰りになられるのですね?」 突然に土下座をした。驚いた小夜子が、幸恵を起こそうとするが、立ち上がろうとはしない幸恵だ。「幸恵さん、やめて。一体、どうしたっていうの? 怒るわよ、あたしも」「ごめんなさい、ごめんなさい。小夜子さまに申し訳なくて」 体を震わせながら、涙声で謝り続ける幸恵だ。「ひょっとして、幸恵さん。正三さんのことなの? だったら、あなたが謝る必要なんかないのよ。ご縁がなかったということよ」

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