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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百三十一) 

2022年05月11日 外部ブログ記事
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 ひとみの差し出すグラスを手にし、口に運んだ。「な、なんだ、これは。酒か、こんなものが。苦いし、泡だらけじゃないか!」「初めてなん? ビールというお酒ですよ。おいしいですやん、うち好きやし」 正三からグラスを奪い取ると、一気に飲み干した。「お前の、その顔。ひげが生えてるぞ、あははは!」ひとみの口の周りの白いリングに、思わず笑い出した正三だ。「ほんなら、しょう坊にも作ってあげるし」と、また吸い付いてきた。
「あらあ、だめやん。そうや、正坊も飲んでみいて。そうしたら、白いおひげができるし」と、溢れるほどに注がれたグラスを差し出した。「いやぼくは……。こんな酒は苦手だけれど」と言いつつも、ちびりちびりと口にした。「だめやって! ぐいっといかな、あかんて! ごくごくと喉を鳴らして飲み干しいな」
「君はどこの生まれだ、どうにも言葉づかいが変だ」「関西ですう、兵庫県の明石という所ですわ。これでも、お父はんは子爵でしたんえ。けど戦争に負けてしまっては、あきません。もう、毎日毎日愚痴ばっかりで。暮し向きも立ち行かんようになってしまい、お母はんは病に倒れてしもうて。それでまあ、長女であるうちに一家の生計が伸し掛かってきた言うわけです。とは言うても、中々に厳しゅうて。子爵という面子が邪魔しまして、あちらではどうにもならず。で、こっちゃならいいかな? と思って来てはみたものの、ここもまた難しゅうて」
「子、子爵さまあ? そ、そんなお方の娘が?……」 あっけにとられる正三を、またひょっとこ顔にして吸い付いてきた。「けはは。引っかかりましたな、しょう坊も。もうこっちゃの殿御は、みんな引っかかりはるわ。けはは……」 大きく口を開けて、屈託なく笑うひとみ。呆気にとられる正三、といってまるで腹が立たない。むしろ特有のアクセントとも相まって、正三も笑ってしまった。
「坊ちゃん、ご機嫌のようで」「何ですか、このやせっぽちは」「坊ちゃんは、色気たっぷりの女が好みだろうに」「いいんだ、いいんだ。たまには、茶漬けもいいさ」「茶漬けって、しょう坊! そんな言われ方したの、初めてやわ! やっぱり、いけ好かんたこやわ!」

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