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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百二十) 

2022年04月14日 外部ブログ記事
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「茂作、そうなのか? そんな話が持ち上がっていたのか? それで、正三との話をご破算にしたのか? なんで言うてくれんのじゃ、そんな大事なことを。お前ひとりで、どうするつもりじゃった!」思いもかけぬ話に、繁蔵が茂作を問い詰めた。「別に本家の世話になるつもりはなかったですけ」。冷たく言い放つ茂作に、次の言葉が出ない繁蔵だ。
「ところが、その話が頓挫してしまいまして」「はあはあ、そうでしょうとも。そんな夢物語りみたいなこと、あるわけがないでしょう」 得心したように助役は頷くが、繁蔵は不機嫌な色を隠さない。そして茂作は俯いたままで、ひとり武蔵だけが、嬉々として語った。三人に話すと言うよりは、事の顛末を思い起こす―己に言い聞かせるようだった。「いやいや頓挫といっても、ある意味不可抗力なんです。いや別の角度からすると、遅すぎたとも言えますな。小夜子が早くそのロシア娘の元に行っていれば、この不幸は防げたかもしれません。その思いが小夜子を暫くの間、苦しめました。そりゃもう、見ていて可哀相でした。ひどい落ち込みようで、自殺するのじゃないかと心配になったほどです」
「自、自殺じゃと!」。気色ばんで茂作が、武蔵に詰め寄った。「な、なんでわしに知らせぬか!」。思いもかけぬ武蔵のことばに、茂作が噛みついた。“小夜子も小夜子じゃ! なんで帰って来んのじゃ。そんなにわしは頼りないのか”忸怩たる思いの中、茂作の心に小夜子の母親の姿が浮かんだ。“澄江は、最後はわしの元に戻ってくれたぞ。お前の母親は、わしの元に……”「申し訳ないことをしました。しかしそれがわたしにとっては、結果良しとなりました。やっとわたしの気持ちを、受け入れてくれたのですから。小夜子にとっても良い事だと思います」
「うん、うん。そりゃ、その方が良い。世界を旅するなんざ、とんでもないことだ。茂作にもしものことがあったら、どうするつもりだったのか。思慮が、やはり足りんわ」 繁蔵が武蔵に相づちを打ち、「社長さん。不幸を防げたといのは、どういうことです?」と下世話な話に飛びつく助役に、苦笑しつつ武蔵が続けた。「ロシア娘は自殺したのですが、孤独感に耐えられずといった具合でしょう。不眠に陥ってしまい、多量の睡眠薬に頼っていたようです。で、その量が多すぎたが為に、帰らぬ人になってしまったわけです。自殺を意識してのことではなかったようです。遺書といったものもなく、何の前触れもなくということでしたから。常日頃、“小夜子に会いたい”とこぼしていたと聞き及びます。もし小夜子がロシア娘の元に、一時的にでも行っていれば……。いやこれは、今さら言っても詮無いことですが」

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