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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百五) 

2022年03月10日 外部ブログ記事
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二の矢がきた。正三が必死のいいわけをする。「えっ?! そ、それは……。いえいえ、ぼくとしましても。役所というのは文書によってうごくものでして。その、実体のない情のようなものでは、だめなのです。なにごとも前例によって事がすすみます。上にお伺いをたてて、その許可なり了解がないものはだめなのです。がんじがらめの状態なのです。
どうぞ、ぼくの立場をおわかりください。ぼくの心のなかでは、小夜子さんは身内です。生涯の伴侶とおもっておりました。しかし、法律上では他人なのです。戸籍に載っていないことには、身内としてみとめてもらえないのです。ぼくとしましても、どれほどに連絡をとりたかったことか。しかし許されない行為なのですよ。ぼくの苦衷も、どうぞお察しください」
ハンカチで額の汗をぬぐいながらの、正三の精いっぱいの弁解だった。しかし小夜子の耳にはまるではいっていない。許しを請う正三のさまを、ただただ見ていた。「やっぱりあの女性との情交で、大人になられたのね」突とつぜんの、まるで予期せぬ小夜子の問いかけに、唖然とする正三だ。“な、なんだ? どういうことだ? 小夜子さん、あなたは知っているのですか、あの芸者のことを。ま、まさか、叔父さんが”正三のあわてふためく様を見た小夜子に、怒りの思いこみあげてきた。“やっぱりなのね。タケゾーの見立てがあたったのね。商売女との情交だろうというタケゾーの言葉、ほんとうなのね”
おのれの操を与えてしまった――否。小夜子のなかでは、うばわれてしまった――小夜子の、先制攻撃だ。小夜子の意思を無視した武蔵の蛮行だと、己に言い聞かせている小夜子だ。抵抗をしなかったのは、万端やむなきことゆえとする小夜子だ。そんな思惑についぞ気づかぬ正三、しどろもどろの返事となってしまった。
「そのことについてはですね。叔父がどのようにいったか、ぼくにはわかりませんが。たぶんに誤解があると思います。決して愛情云々ではなく、その何と言いますか、流れと言いますか……そう、そうなのです。場のいきおいに飲まれて、つい深酒をしてしまいまして。不覚にもめいてい状態におちいっていたのです。
で、皆がなにをしているのかわからぬ状態になりまして。おのおのがそれぞれの芸者と、その、別室にうつっていったのか。ぼくにしても、どのようにして部屋をかえていたのか、まるで判然としないのです翌朝に目覚めたおりに、となりにその芸者がいたときには、もう飛び上がらんばかりに驚きまして。ですから、その、ですから行為そのものをしたのかどうかすら、判然としないのです。
はい、服はぬいでおりました。芸者が言うにはぼくが脱いだと言うのですが。キチンとえもん掛けに背広なんかが掛かっているところをみましても、自分で脱いだとは思えんのです。たしかに、裸で寝ておりました。芸者を抱いてはおりました。しかし、しかしです。ぼくはめいてい状態で、なにも覚えていないのです。おのれの正気はまるでなかったのです」

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