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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百六十九) 

2021年12月02日 外部ブログ記事
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 一週間我慢した千夜子だった。
翌日にも何らかの連絡が入るものと思っていた千夜子だった。
でその折りの受け答えを、一言一句間違えてはならぬとメモ書きしていた。
それが、二日、三日と経ってもなお連絡が入らない。
よほどに非道い状態なのかと気を揉むが、入院したならしたで、その旨の連絡があるはずと思った。
案外に世間知らずな非常識人間なのかと恨みたくなる。
GHQとの繋がりがあると言っていたが、ひょっとして裏社会? とも思えてきた。
そうなるとおいそれと話をするわけにはいかないかも? と不安な思いが募る。
しかし、それならそれでいいじゃないの、とも思う。

 千夜子は意を決して電話をかけた。会社に連絡を取り、不在だと聞くと「ぶしつけですが」と、自宅にかけ直した。
非常識だと思いつつも、背に腹は代えられない。
じり貧の店を立て直す切り札になるのだと、勢い込んだ。
「奥様の具合は如何でごさいますか? 気になっておりまして 」。
普段はどちらかと言えば甲高い声で話す千夜子だが、いかにも心配げに声のトーンを落として話した。
「いやあ、これは申し訳ないことでした。お礼にも伺っておりませんで。
お陰さまで、随分と落ち着いてきました。もう随分と良くなりました。
今、台所にいるんです。呼びますか?」

 たかが個人経営の美容院だと考え、その内にその内にと一日延ばしにしていた。どうせ婆さんだろうという思い込みもあった。
それにしても相手から電話が入るとは“お礼の催促かよ”と、怪訝な面持ちで電話を受けた。
「いえいえ、そんなことは宜しいんです。そうですか、ご快方に向かわれてみえますか。そりゃ、良うございました。
店でのご様子がただ事ではありませんでしたので、ちょっと気になりまして。
あたくしどもの使っているパーマ液が原因ではないかと心配にもなりましたし」
「そんなことはありません。モデルに肩入れしていたものですから、ショックが大きかったようでして。
本当にありがとうございました。適切な処置ですと、医者も言っておりました。
小夜子は加藤と言う人物に、良い感情を持っておりませんので。
あ、いやいや。専務の加藤ではないんです。同姓の者がおりまして……」

“何を話すんだ、俺は。余計なことじゃないか”と、苦笑する武蔵。
しかし千夜子の声に、“中々、艶っぽい声じゃないか”と、武蔵の琴線に響くものを感じた。
「実は……。折り入ってご相談がございまして」
“自宅にまでかけて来るとは。この女、余程にしたたかだな。
金の無心か? まずいことをした、そこまで気が回らなかった。
五平にしても珍しいことだな。あいつもそれだけ慌てたということか”
「実は、奥様から良いお話を伺いまして、その件でお話しさせて頂きたく思いまして。
非常識だと言うことは、重々承知しております。
ですが、どうしても社長さまにおすがりしたく……」。
相手の切羽詰っている様が、手に取るように分かる。

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