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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(百四十) 

2021年09月28日 外部ブログ記事
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「佐伯君、この案件を報告書にまとめてくれ給え。次官様提出用だから、頼むよ」
「かしこまりました。すぐにも、取り掛かります」
 正三は声を掛けられた途端、弾かれたように立ち上がった。
やっと、ここまでに辿り着いたのだ。
逓信省に入省後すぐに総理府内の電波管理委員会に出向を命じられ、テレビ放送に関する免許交付に関わってきた。
大きな利権が絡んでいるだけに、正三の行動は厳しく制限されていた。
先輩職員らと同様に外部との接触が一切禁じられ、府内への泊り込みもしばしばだった。

 そもそも新任の正三如きが組み入れられるようなプロジェクトではなかったが、叔父である佐伯源之助の強引な引きがそこにあった。
源之助にとって本家筋の跡取りである正三を、一介の官吏で終わらせるわけにはいかないのだ。
この後一旦休職とし、東大の法学部へ入学させる手筈を整えていた。
わざわざこの時期に入省させたのは、このプロジェクトに関わらせたいが為だった。

 テレビ放送を含む電波行政が、この後逓信省において主流になると踏んでのことだった。
ただ、地方校出身の正三では、出世レースから取り残されることは目に見えている。
そこで、東大法学部への入学としたのだった。
源之助としては、どうしても局長までは出世させたかった。
そしてあわよくば、事務次官にまで上り詰めさせたかった。
己自身が局長止まりであることが、次官レースに遅れをとったことが、悔やまれてならなかった。
現次官の天の声によって、源之助の夢は断たれた。
地元出身の代議士を動かしての運動も実らず、佐伯本家への借財が残ってしまった。

「源之助よ。金のことはいい、くれてやる。それよりも、正三を頼む。
なんとしても、お前の後釜に座らせてくれや。
いやいや、次官さまは無理じゃて。正三の器量は、親の儂が一番よく知っておる。
局長じゃ、お前と同じ局長さまにならせてくれや。

それとな、悪い虫がついてしまって、困っておる。
ほれっ、一攫千金ばかり狙うちょる茂作という男を知っとるな? 
そこの小夜子ちゅう娘がの、正三にちょっかいを出しとる。
あんな家と親戚筋なんぞに、なるわけにゃいかんのだ」
「分かっとります、分かっとります。ご本家の為です、何としても、正三くんを次官にまで上り詰めさせましょう。
後押しさせていただきます。それに、小夜子とかいう娘、正三くんには近づけさせません」
 二人のひざ詰談義で、正三のレールが敷かれた。

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