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人生いろは坂

友人の死を悼む 

2011年09月03日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 友人が亡くなった。縁浅からぬ友人であった。水島に工場が出来て以来、初めての新卒者として
入ってきたのが私より五年後輩の彼らであった。それまでの沈滞ムードが一挙に解消し、工場は急に
賑やかになった。

 と同時に私達も自動的に工場の先輩となった。その頃は今と違い、先輩と後輩のけじめは比較的
はっきりしていた。従って、後輩が入って来ると言うことは、自動的に下っ端としての立場から
抜けられるということであった。

 その頃、我が組織内では労働運動が高揚期にあった。そして青年婦人部の活動も活発であった。
大半の従業員が二十代から三十代という若い工場においては、みんなが青年婦人部のようなもの
であった。しかし妻帯者の男性は青年婦人部から除外されていた。

 そうした青年婦人部層をまとめていたのが私であった。私は組織外の活動もしていた。反戦青年委員
や社会主義青年同盟の活動であった。大いにこれらの薫陶を受け組織内にもそれらの活動を持ち込み
たいと考えていた。

 そのために作ったのがフォークグループ「すかんぽ」であった。その仲間の一人に先日亡くなった
T君がいた。彼は楽器こそ弾かなかったが、縁の下の力持ち的存在であった。歌集を作り定期公演の
度ごとに入場整理券等を作っていた。いわばグループのムードメーカー的存在でありグループのまとめ
役でもあった。

 ある日、彼が私達夫婦の前に神妙な顔で現れた。仲人をして欲しいという要望であった。結婚して
日も浅く、ましてや年齢もさして離れていないT君達の仲人は無理であった。しかし他に頼める人は
いないと言うことでやむなく引き受けることにした。実は私達の結婚の際には祝賀会まで催してくれた
他ならぬT君の頼みでもあった。こうして私達夫婦は若くして仲人になった。T君は私達夫婦の共通の
友人でもあった。

 以来、変わらぬ交流関係が続いてきたのがT君ともう一人M君であった。私が定年を迎えたときにも
心のこもった退職祝いをしてくれたのが彼ら二人であった。そしてピースボートでの地球一周の旅の
帰国後、帰国祝いをしてくれたのも彼らであった。

 T君、M君と私達四人はお互いに何かあればこうした集まりを繰り返していた。私が定年になって
間もなくT君が癌になり入院したという話を聞いた。しかし、その時すでに他へ転移していたようだ。
抗ガン剤治療をするのだと話していた。命さえ繋いでおけば今の医学の進歩からきっと完治する日が
来る。意外にT君の電話口の声は力強かった。この調子ならきっと完治の日も近いと思われた。

 そうして私達夫婦の地球一周の話が印象に残っていたらしく、やや健康を取り戻したとき80日間の
地球一周の旅へ夫婦で旅だった。私達と同じピースボートによる旅だった。やはりケニアのマサイマラ
自然保護区の動物たちが印象に残ったらしく、帰国後編集したというビデオには多くの動物の姿が収録
されていた。

 彼らのこの旅から帰国後一番に会ったのも彼の家族ではなく他ならぬ私であった。偶然と言うには
出来すぎた偶然であった。その日、帰りましたという電話を受けた。私は同じ日に岡山で所用があり
出かけた。そしていつもは通らない駅の表玄関へ降りた。そこへ帰国したばかりの二人が立っていた。
元気そうな二人の笑顔があった。縁浅からぬものを感じた出会いであった。

 今はただ安らかに眠って欲しい。壮絶な癌との闘いだったようで死に顔には苦闘の後が残されていた。
本当によく頑張ったと思う。神は何故かくも心優しく気遣いの行き届く彼にこのような試練を与えた
のであろうか。彼こそもっと穏やかなる人生を送る権利を得た人間ではなかったのか。

 葬儀は主義主張に生きた彼らしく無宗教の告別式であった。ピースボートの旅の思い出や数々の家族
との思い出がたくさんの写真やDVDで映し出され、彼と家族の思い出深いお別れの会であった。私は
その日の朝、奥さんから頼まれて弔辞を述べることになった。さすがに何度も言葉が詰まって弔辞に
ならなかった。

 それにしても亡くなる前に一度だけでも会えて良かった。お盆に帰ったM君から電話を貰い、彼が
重症であることを知った。翌日、なにわともあれと思い病院を見舞った。その日はお盆だったことも
あって子どもさんや親戚の方々も大勢見舞いに来られていた。彼も体を起こして喜んでくれた。
そうして旅の思い出がいっぱい詰まったDVDや写真を見せて貰った。そしてご家族と一緒に写真まで
写した。その写真も告別式でも写されていた。

 今は共に釣り竿を伸ばしサヨリを釣った日が懐かしい。サヨリが釣れる季節が近くなった。しかし、
もう彼の姿はない。

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